キャリアガイダンスVol.435
14/66

写真左から、進路指導主事の塚本真嗣先生、岩谷宣行先生、杉澤 斉先生代高校は2017年度より、探究活動を軸にした「New Will Project」という取組を推進している。1年次にまず「地域課題解決型」のグループ探究に挑戦。アグリ・グリーン・ライフ・ツーリズム・ヘルスの5領域について、生徒が希望ごとに分かれ、5〜7名の班で活動する。2年次には「キャリアデザイン型」の個人探究へ。一人ひとりが自己の将来を意識した課題を設定し、調査や分析を進める。 この取組で重視しているのが、振り返りだ。活動中、生徒は自分で考えたことや行動したことを、ICTを使って随時記録し、本人がいつでも活動を振り返ることができるようにしている。また、年3回の発表の場を設け、そのつど「自己評価」「相互評価」「外部評価」を行い、活動を多面的に振り返ることもしている。 そうして3年生になったら、今までの探究活動の記録も参考にして、進路を見定め、志望理由をまとめていく、というのが全体の流れだ。 同校は、能代・山本地区の中心的な進学校だが、昨今は、少子化および中央地区に進学する中学生の増加で、定員割れが続いていた。このため、高校入学時の学力は生徒間で差が出るようになり、卒業後の進路も進学から就職まで選択肢が広がり、〝生徒の多様化〞が進んでいた。同時に、推薦・AO入試の増加など〝進路実現のために求められることの多様化〞も進行、先生たちは「個に応じた指導」の必要性を感じていたという。 ただ、個に応じた指導をしたくても、生徒たちは「素直だが積極性に欠ける」傾向があり、ともすれば指示待ちになるという課題があった。 こうした問題意識から、教育活動の見直しを図るようになった、と進路指導主事の塚本真嗣先生は語る。 「個に応じた指導をするには、日々の学習活動で主体性を育みながら、生徒自身が振り返りを重ねて自己を見つめるような、『自立した学習者』に成長できる環境にしなければ、と認識するようになったのです。本校では以前からWill Projectというキャリア教育を行っていましたが、社会人講話やインターンシップを生徒が目的意識もなく体験するなど、形骸化していた部分もありました。そこで、生徒が自分なりの課題をもって社会と関わる体験をし、自ら振り返って探究する、という活動にシフトさせたのです。生徒主体の活動で、おのおのが自己の課題や進路を明確にしていけば、キャリア教育としても深化するだろう、と。それが探究を軸にしたNew Will Projectです」 New Will Projectの特徴の一つは、「探究でどんな資質・能力を育みたいのか」を、ルーブリックによって前もって生徒に示していることだ。 「生徒に対してルーブリック説明会も行い、どういう力をどのレベルまで高めたいか、という評価の観点を共有します。そうすることで、生徒の活動への意識が高まり、自己評価や相互評価もしやすくなり、振り返りの質が高まると考えています」(塚本先生)今成果を上げることより生徒が成功も失敗も振り返り自ら成長することを目指す本人の希望に沿った進路を支援したいのに、「指示待ち」になる生徒たち。この課題を乗り越えようと、探究活動で振り返りを活用した事例を紹介します。探究能代高校 (秋田・県立)能1914年創立/普通科・理数科/生徒数630人(男子316人・女子314人)/校是は「文武両道」。グループ探究活動や個人探究活動を教育活動の中心に据える。学校データ取材・文/松井大助発表会の様子。聴き手の生徒たちはスマホを使い、各発表の内容やプレゼンのレベルを4段階で投票、コメントも送信。発表者はその結果を円グラフやコメント一覧で確認し、振り返りに活かしていく。生徒が自己を見つめないと個に応じた指導はできない背景・ねらい報告や発表の機会を生かし多面的に活動を振り返る実践142020 DEC. Vol.435

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る