キャリアガイダンスVol.435
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中身にすることが活動の目的ではなく、生徒が自分で考え、失敗もしながら、自身で振り返って学ぶことを大事にしたいからです。そしてその学びを生かして、2年生の個人探究にステップアップします」 もっとも、まったく何もせず生徒を放り出しているわけではなく、探究活動とリンクさせた情報科の授業で、思考の整理や振り返りに役立つことは全員が学ぶという。その授業を担当しているのが杉澤 斉先生だ。 「アイデア出しのためのイメージマップの活用、情報をグルーピングして優先順位をつけるやり方、課題を5W2Hで考えてみる手法などを、探究とは別テーマで、情報科の授業で先にトレーニングして学びます。それでも生徒たちは、探究活動で考えがまとまらず悩むことがあります。そうしたときは、自分たちで方向性を見出せるよう、対話で生徒の思いを引き出すことを意識しています」 探究活動で生徒が自ら考えて動き、振り返ることを重ねていくと、体験学習にのぞむ姿勢にも変化が表れた。顕著な例が、インターンシップだ。自分は何を探究したいのか、どんな力を高めたいのか、振り返りを重ねながら目的意識を育んできただけに、インターン先から「質問の質が変わり、積極性も増した」という反応が返ってくるようになった。 活動全体を通して、自信や意欲も育まれていくようだ。優秀発表会後の最終の振り返りでは、生徒がアンケートにこんな思いを記している。 「複数の資料や情報をわかりやすくまとめ、説明する力がついたと思う。優秀発表会は、自分にない視点で各テーマを追究していて、興味深い内容だった。来年は個人探究だが、今のうちから広くアンテナを伸ばし、いろいろなことに関心をもちたい」 「電話をしたり足を運んでお話を聞いたりすることで、コミュニケーション能力や度胸がつき、少し成長できました。2年生の個人探究では、この積極性を生かし、深く掘り下げて考えていけるようにがんばりたいです」 「勉強でも部活でも、工夫し、考えることの必要性を改めて感じた。目標設定だけでなく、その目標実現のために自分なりの考えをもつことや行動に移すことが、進路実現に向けての第一ステップだと思った」 振り返りで自分の課題や成長をつかんだからこそ、「次はこうしたい」という新しいWillが芽生えてきたことを感じさせる。New Will Projectの1期生が卒業した昨年度は、大学などに提出する志望理由書の内容が充実。推薦・AO入試の合格率がぐんと高まった。 取組を進化させるために、関係者一同でさらに議論したいこともある。 一つは、発表会で自己評価・相互評価・外部評価をしたときに、「教員がそれら評価のどこを拾ってあげると、生徒の振り返りがより深まるか」を話し合っていくことだ。 「教員の関わりによって、生徒のその後の活動を前進させることもできますが、逆の場合も起こりえます。我々もまだ試行錯誤しているところです」(岩谷先生) 「その点では、生徒発表後の外部の方の指導助言が、我々の学びにもなっています。『そんな視点からも褒められるのか』など、気づきを得られることが多いのです」(杉澤先生) もう一つは、外部との連携を〝持続可能〞な形で発展させることだ。 「ご協力いただいている大学や市役所、地域の方には、かなりのご負担をかけていて、感謝しかありません。一方で、生徒の発表の場をもっと広げてあげたい、という思いもあるのです。例えば外に出向いてプレゼンするなど、生徒が発表して多様な意見を頂き、振り返りながら学ぶという場を、今後もしっかりと確保していきたいと思っています」(塚本先生)●探究活動は、課題を見つけることも、課題にどうアプローチするかも「時間だけ与えられて自分たちで考える」状況だったので、大変でした。中間発表で外部アドバイザーさんから厳しいコメントをもらって、落ち込んだことも。でも、活動を振り返るなかで『主体性や課題発見力を高めて成長できた』とも実感できたので、貴重な経験だったと思います。個人探究では「育種」と「スマート農業」を追いかけ、農業試験場にインターンもしました。この先も農学のことを学んでいきたいです。(鈴木さん)●探究活動で良かったのは、自分を客観的に捉えられたことです。課題設定がうまくいったと思ってルーブリックの表を見たら、4段階中まだ下から2番目のレベルだったり。みんなで発表し合うことで、ちょっとした競争意識をもちながら、論理性や話し方などを磨くことができたとも感じています。個人探究では「高校生アスリートの理想的な生活」を考えました。運動部にアンケートを取り、インターン先で栄養士さんにも話を聴いて。栄養に興味が湧いたので、大学でも学びたいです。(大谷さん)写真左から、3年生の大谷 巌さん、鈴木 葵さん探究活動の振り返りを通して自分の「課題」や「成長」を発見生徒インタビュー振り返りで目的意識が育ち自信や意欲も培われる生徒の変容多面的な評価を起点により良質な振り返りを今後の展望162020 DEC. Vol.435

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