キャリアガイダンスVol.435
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写真右から、主幹教諭の錦にしこおり織 剛先生、3学年主任の田邊映美先生。がんばったことと成長のつながりをキャリア・パスポートで実感。進路や生き方につなげていくHRの時間を中心にキャリア・パスポートを活用した定期的な振り返りを行い、日々の学びを生徒一人ひとりの将来につなげる取組をご紹介します。HR子化の著しい地域にあり、学校の魅力化に地域ぐるみで取り組んでいる大東高校。つながる力(人間力)・つなげる力(学力)・つむぐ力(社会力)を備えた生徒の育成を目指し、地域をフィールドとした探究活動やチャレンジのなかで生徒の力を伸ばすキャリア教育が特長だ。そのさまざまな教育実践を生徒一人ひとりの将来へと着実につなげるため、オリジナル手帳やポートフォリオに日々の記録を蓄積し、それらを年3回に渡りキャリア・パスポートに整理。3学年では「学びの報告書」にまとめることで高校生活を総括する、複層的な取組を行っている。 キャリア教育を担当する錦織剛先生は、同校の生徒について「素直で礼儀正しくとても気持ちの良い生徒たち」と認める一方で、「主体性の育成」という積年の課題もあげる。数年前の教員の議論のなかでも、「『なぜ』を考えずにただ『やる』」「どうがんばればよいかわかっていない」「一歩を踏み出す勇気がない」など、主体性に関する課題感が目立ったという。 そんな生徒たちの主体性を、地域社会の中で自らテーマを見つけて挑戦する経験を通じて育んでいこうと、同校は2014年度から地域と連携したキャリア教育の推進に力を入れている。その一端を担ってきた3学年主任・田邊映美先生は、「生徒が自ら何かをしたいという『will』を重視して取り組んできた」と語る。コーディネーターやNPO法人の協力も得て地域連携を推進。総合的な学習(探究)の時間(以下「総合」)では、地域の大人や行政へのインタビューを行うフィールドワークや、地域課題の解決に取り組む探究活動などを実施。課外においては、他校生との協働プロジェクトや、生徒のアイデアを地域に活かすコンテストへの挑戦などを後押ししている。 こうした活動による生徒の成長は生徒アンケートの結果にも表れ、手応えをつかんだ同校。キャリア教育の質をもう一段引き上げるため、次に取った施策は、新たに取組を増やすことではなく、〝取組を振り返り、次につなげる〞仕組みを作ることだった。 主体性を発揮できるようになるために身につけたい資質・能力として、「チャレンジ精神」「寛容さ」「協働する力」「広い視野」「思考力」「表現力」「計画実行力」の7項目を設定し、ルーブリック評価表を作成。さらに、市内の小・中学校と共に取り組む島根県の「キャリア・パスポート調査・研究事業」を活用して、そのルーブリック評価を組み込んだキャリア・パスポートを開発し、18年度より運用している(図1)。「主体性の伸長を目指してさまざまな経験や機会を増やしてきましたが、生徒アンケートの結果では主体性に関わる項目の向上は一部の生徒にとどまっており、全員の底上げまでには至っていない状況です。その一因として、振り返りが十分にできていないために、次に踏み出す一歩や目標が見えにくくなっていることが考えられます。そこで、キャリア・パスポートというツールを取り入れて、少図1:オリジナルのキャリア・パスポート、   ルーブリック評価表上は1年生第2回のキャリア・パスポート。最初に取り組みやすいルーブリックの数値選択、後ろに記述設問を置くことで書きやすく工夫。右はルーブリック評価表。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 発行メディアのご紹介>> キャリアガイダンス(Vol.435)取材・文/藤崎雅子取組を増やすのではなくそこからの学びを最大化させる背景・ねらい大だいとう東高校 (島根・県立)「学びに向かう力」を育むリフレクション授業、探究、HR、部活動・・・実践事例172020 DEC. Vol.435

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