2016年度より弓道部顧問を務める福田創規先生。国語科。大学院では「読む」「書く」の関連性を研究、現在は「なんのために読むのか」「なんのために書くのか」など生徒が目的意識をもつことを大切にしている。かな自然に囲まれた地域にある尾瀬高校は、普通科と自然環境科を設置する、全校生徒135人の小規模な学校だ。部活の多くは少人数で、今回紹介する弓道部も現在部員数16人で活動している。 同部は5年前、日々の練習や試合にリフレクションを導入。そのなかで生徒は効果的に腕を磨き、今や県内有数の強豪校となった。その強さにリフレクションがどのようにつながっているのか。生徒はどう成長しているのか。顧問の福田創規先生と部員の話から探っていく。 2016年、福田先生が新卒採用で同校に着任し顧問となったとき、弓道部の活動は決して活発とは言えなかったという。練習をさぼる生徒が珍しくなく、試合でも目立つ成果は上がらない。生徒がよく口にしていたのは「自分たちにできるわけがない」だった。 「地域の狭い人間関係のなかで育ってきたこともあり、『自分たちはこれぐらい』という限界を勝手につくって、やってみたいという気持ちすらもたずに引いてしまう。こんなに素直で純粋な生徒たちなのだから、上達しないはずはないのに、非常にもったいないと感じました」(福田先生) 自身も弓道経験があり、大学院時代に強豪校である母校の弓道部を指導していた福田先生は、特別な才能がなくても取り組み方によって上達できるとの確信をもつ。しかし、尾瀬高校の弓道部顧問となった当初、その思いは届かず、生徒は反発。「最初から目標も上達意欲も高い強豪校の論理をそのままもち込んでしまった」と福田先生は振り返る。 そこで取り入れたのが、生徒自身から引き出した言葉を軸にステップアップさせていく、リフレクションの取組だ。場面に応じた3種類のワークシートを作成。そこに生徒が毎回の練習や試合での自分の状態を記録し、振り返るなかで、自ら成長していくことを促そうとした。 「生徒は力がないのではなく、やり方がわからないだけ。弓道を通じて、やればできる感覚を掴み、自分の可能性や価値観を広げていってほしいと思って取り組んでいます」(福田先生) 練習、試合、試合シーズンの節目ごとに、具体的な取り組み方を見ていこう。 日々の練習では「的中記録表」を用いる(図1)。生徒はまずその日の取組目標を決めてこれに記入。その点を意識しながら練習を行い、随時、的中数や自身の状態をメモしていく。最後に練習全体を振り返って、「今日できたこと・気づき」と「次回取り組むこと」を書き込む。 福田先生はそれらに目を通し、マークや簡単なコメントを付けて次の練習時に戻している。最初は「今日は楽しかった」といったひと言しか書けない生徒も少なくない。 「まずは書けたことに対して花丸を付けます。そして、特に『これができるようになった』『こんな発見があった』とい生徒の内にある言葉を引き出し意欲や力に変える繰り返しのなかやればできるという自信につなげる少数精鋭で優秀な試合成績をあげている弓道部が、日々の練習や試合で行っているリフレクションの取組をご紹介します。部活動尾瀬高校 (群馬・県立)豊1962年創立/普通科・自然環境科/135人(男子83人・女子52人)/「自然との共生」を図ることのできる人づくりが目標。尾瀬地域で連携型中高一貫教育実施。自然環境科では独自の環境教育を展開。学校データ取材・文/藤崎雅子弓道場には後方に机が置かれ、生徒はここで随時「的中記録表」を記入しながら練習を行う。的中すると全員が「よし!」と掛け声を上げ、合間に生徒同士が教え合うなど、チームで切磋琢磨している。「できるわけがない」と自ら可能性を閉ざさないために背景・ねらい教員の言葉が、生徒の深い考えや意欲を引き出す実践202020 DEC. Vol.435
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