の先どうなりたいのかという、進路にもつながる思いが、おのずと育ってくると考えているからです」 先生のサポートも受けて、CASの活動と振り返りを重ねた生徒たちは、最終的には卒業までに、今までの活動で「7つの学びの成果」をあげたことを、エビデンスを用意して提出する。どんな形で提出するかは生徒が自由に選ぶことができ、レポートでもいいし、写真や映像による作品や、自作のWebサイトでもいい。そうして生徒が自らの成長を証明して、初めてプログラム修了となる。 活動を振り返り、自らの成長を他者に示すことの効果は、見守ってきた先生たちが如実に感じている。 「CASの活動が進むほど、生徒たちは、何を思ってどんなことをし、どういうことを学んだかを堂々と話せるようになるのです。自分の意見を言えるようになったことや、活動を通して学んだ具体的な実感があることが、彼らの自信につながっているのを感じています」(ニクライ先生) 「生徒たちは活動のなかで失敗もするのですが、振り返りでそこを客観的に見つめ直し、どうしたら改善できるかを自分で考えるようになりました。『次につなげることができる』というのが、振り返りの一番の強みだと思います。それが本人の成長につながっていますし、そのプロセスを経たことで、自己推薦書や志望理由書にも、活動内容だけでなく『克服したこと』や『学んだこと』まで書けるようになっています」(清沢先生) 次につなげる、といっても生徒の活動のなかには、「こうしたらもっと良くなる」と振り返った時点で、在学中には同じことに再チャレンジできずに終わるものもある。しかし、それ故に「次の世代につなげたい、という思いも必然的に出てくるようです」と清沢先生は見ている。生徒たちは、下の学年のためにイベントや動画で自分たちの経験を伝える活動や、立ち上げたプロジェクトを後輩に引き継いだりする活動も、CASの一環としてどんどん始めているというのだ。 「昨年度の卒業生には、仲間と一緒にIBヘルプデスクのようなものを立ち上げ、全国の高校生の相談に乗る活動を続けている者もいます。そういう姿を見ていると、今生徒たちがしている活動は、CASの修了で終わるものではなくて、その先の人生にもつながっていくものなのだな、と思うのです。『自分が動くことで何かを変えられる』というマインドが、生徒たちにじわじわと浸透しているのを感じています」(松﨑先生) CASの取組は学校全体にも広がっている。M‐CAS(茗溪キャス)という、IBDPコースでなくても中学3年生以上の希望者が取り組める活動が始まり、2020年度には100人近くが参加しているのだ。 今後としては、清沢先生は「生徒の振り返りの質をさらに高めたい」と思っている。生徒によって振り返りの深みにまだ差があるからだ。もっとも、CASでは、振り返りというのも、強制はせず生徒が自発的に行ってこそ意味があるとしている。だから、生徒が自ら振り返りを深めていけるよう、教員としてどうふるまえばいいかを考えていきたいという。 ニクライ先生には、その先に見すえている夢がある。 「私たちが行っている振り返りのサポートを、将来的には全部、生徒に任せたいと思っています。先輩が後輩の力になるというように。高いハードルかもしれませんが、今の生徒たちの成長を見ていると、いずれ必ずできると感じているんですよ」●CASの活動で、IBの科目選択を後輩に説明する会を開きました。去年、自分が不安だったので、判断材料を増やしてあげたかったのです。クラスのみんなにも協力してもらったのですが、自分が中心になって何かをしたのは初めてだったので、とてもいい経験になりました。振り返りながら進めることで、共に活動する力が身についたな、とか、次は時間管理をこうしたい、とか、社会に出てからも生かしていけることを、たくさん学べたと感じています。(根本さん)●寮の食堂の残飯を減らすプロジェクトを、寮生5人で進めています。寮生の食べる量に合わせた提供量の調整、残飯のたい肥化、余った加工食品の寄付を考え、実現可能かを寮長さんや栄養士さん、市役所や子ども食堂の職員さんと話し合ってきました。今は活動の後輩への引き継ぎも目指しています。知識が足りず提案が通らなかったり、会議の司会でボロボロになったりもしましたが、そうした失敗から学んだことも含めて、今後に生かしていきたいです。(青山さん)●所属する美術部では、毎年一つのテーマで部員みんなで作品を作るのですが、その創作をCASとして進めました。今年のテーマはSDGsを知ってもらうことで、私は17の目標のうちの「貧困をなくす」ことを絵にしました。昔から絵を描くことが好きでしたが、CASの活動と振り返りで「美術には視覚的にものを訴える力がある」とも実感できました。その力で、社会に貢献できるといいなと思っています。次は地域の身近な問題も考えてみたいです。(甲斐さん)写真左から、高校2年生の根本 樹たつきさん、青山和輝さん、甲斐文ふみは葉さん振り返るなかで認識できた力を社会に出てからも生かしていく生徒インタビュー自分で何かを変えられるその自信をもって実社会へ生徒の変容生徒同士で振り返りを深めていくような学校に今後の展望「学びに向かう力」を育むリフレクション授業、探究、HR、部活動・・・実践事例252020 DEC. Vol.435
元のページ ../index.html#25