リフレクション、ストレッチ、エンジョイメントの往還が人を成長させる社会人の人材育成の分野でも注目されるリフレクション。すべての経験を自分の成長にどうつなげるか、そのためにはリフレクションがどのように役立つのか。また、部下の成長を支援するために、どう活かせばよいか。北海道大学大学院の教授で、経営学、経験学習やリフレクションに詳しい松尾睦先生に伺いました。があると言っていますが、行為の後に振り返るだけでなく、行為の最中でも、批判的に取り組んだり、ときには立ち止まって振り返ったりしながら、よりよい仕事のあり方を考える人の方が、より成長できるといわれています。 就職して、新入社員として同じスタートラインに立った社員でも、半年後、1年後に、大きく成長する人もいれば、あまり成長しない人もいます。なぜ違いが生じるのでしょうか。これも、リフレクションの習慣の有無が鍵といえます。 例えば多くの会社には、社員に「日報」を書かせるという習慣があります。面倒な日報も、上手に使えばりっぱなリフレクションツールとなります。 良い日報は、①事実の確認(何時にどこで何をしたか) 人は、経験を通して学びます。経験から学ぶためには、「経験を振り返って、教訓を引き出す」リフレクションというプロセスが大変重要です。リフレクションが習慣づいている人は、学校を卒業し社会に出てからも、体験から学び、自分の中に教訓として取り込むことで、生涯活躍し、成長し続けることができます。 一流といわれる人は、たいていリフレクションをしています。例えば永世七冠となった棋士の羽生善治さんをはじめとしたプロ棋士は、対局後、必ずもう一度同じ対局を指し直すことで知られています。なぜ勝てたのか、どこで負けたのか徹底的に振り返り、次の対局に活かすというのです。 サッカーでよく知られているオランダメソッドは、プレーの途中で選手を集め、「今のパスはどうだったか」「こうしたほうが良かったのでは?」と振り返り、また練習を再開するということを繰り返すといいます。 仕事でもそうですが、「ここはこう改善したほうが効率的なのでは」など、現在進行形で仕事に取り組みながら振り返ったり、軌道修正をすることはあるのではないでしょうか。 ドナルド・ショーンという学者が、リフレクションには「行為の最中のリフレクション」と「行為の後のリフレクション」まつお・まこと●東京生まれ。88年小樽商科大学商学部卒業。92年北海道大学大学院文学研究科修士課程修了。99年東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(学術)。2004年英国ランカスター大学にてPh.D.(Management Learning)取得。塩野義製薬、東急総合研究所、岡山商科大学商学部助教授、小樽商科大学大学院商学研究科教授、神戸大学大学院経営学研究科教授などを経て、2013年より現職。著書『経験からの学習』(同文舘出版)、『部下の強みを引き出す経験学習リーダーシップ』(ダイヤモンド社)等。AM :インターンシップ受け入れ 最終確認PM :学生向けガイダンス実施自分では良い出来だと思っていたけど、他部門の先輩から取りこぼしがあるとフィードバックをもらって少しショックだった。ほかの人から見た情報を得ることが、仕事の質を改善するためにも必要になると感じた。北海道大学大学院 経済学研究院 教授松尾 睦日報におけるリフレクションの活用例(若手社員のケース)一流の人は皆、リフレクションをしている①事実の確認②感情③評価次の経験に活かすなぜ、人によって成長に差があるのか取材・文/石井栄子262020 DEC. Vol.435
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