キャリアガイダンスVol.435
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したい出来事の具体化を促すよう、自分の行動の背景にある思考、感情、望みを表面化させ、相手(生徒、同僚など)の行動の背景にある思考、感情、望みを想像して掘り下げていくツールです。この8つの問いを考えて書いてみることで、自分と相手の違いに気づき、どうすればよかったか、次にどうすればよいかを考える手助けになります。 リフレクションをする際は他者からの視点のフィードバックも有効です。1対1だと気詰まりな状態になることもあるので、私のワークショップなどでは、3人チームでやっています。リフレクションの主体である相談者、コーチ、コーチのコーチという役割分担です。 また、行為を振り返る際は感情まで掘り下げることが大事なので、コンフォート・ゾーン、つまり安全・安心の場が確保されていないと本質に辿りつきにくくなります。コーチ役の人は①相手を受容し、②共感し、③傾聴し、④ポジティブに良いところを見つけ、⑤ダメ出しはせず、⑥アドバイスは後回しにします。これを「安全・安心の6か条」と呼んでいます。まずは本人から引き出すことが大事なので、本人が振り返りをした内容を最後まで聴き終わった時点で、8つの窓のうち、まだ含まれていなかった点などについて質問をしていくことで、本人から引き出していきます。 こうした方法を繰り返しているうちに、自身でも自然とリフレクションができるようになっていくのです。 教員同士でリフレクションするためには、まずは「場づくり」が欠かせません。できれば学年会や担任会などで仕組みをつくって、組織で取り組むことが望まれます。そして、実施にあたって大切なポイントが二つあります。 一つは、校内での上下関係を一旦取り払うことです。なかなか難しいこと浅い振り返りで次の行為を選択してしまい(図1:②↓④)、結果的に解決にならないことが多々あります。 例えば、授業中に姿勢の悪い生徒が気になって叱ってしまったとき、果たして「姿勢が悪いのは良いことではない」という倫理的な思考だけで叱ったのか。そういう場合もあるかもしれませんが、その奥に「姿勢の良くない生徒を見るのは好きではない」という自分の感情があることに気づくと、「(姿勢は良いに越したことはないが、)どうしてその生徒がそういう姿勢でいるのかを考えてみよう」と思うことができます。叱るという行為をする前に、その意味を一旦考えることで、違った対応ができたかもしれません。 自分の思考や感情、望みと向き合うには自己開示が求められます。自然にそれができるリフレクティブな人もいます。そうでない人も繰り返していくことで身につけることができます。 リフレクティブな思考の習得に役立つのがコルトハーヘンが開発した「8つの窓」の問いです(図2)。リフレクション図2:具体化を促す「8つの窓」図1:理想的なリフレクションのプロセスを示した コルトハーヘンの省察モデル(ALACTモデル)私は何をしたか?相手は何をしたか?私はどう感じたか?相手はどう感じたか?私は何を考えたか?相手は何を考えたか?私は何を望んでいたか?相手は何を望んでいたか?リフレクションする経験(出来事)について、そのときの自分と相手(生徒、同僚など)それぞれの行動の背景にある、思考、感情、望みを掘り下げていく。ある出来事についてリフレクションする際、目に見えた行為を振り返って②次の行為④を起こすのではなく、行為の奥に隠された思考や感情を掘り起こすことで本質的な気づきを得て③、それに基づくことで次の取るべき行為を選び④、また次の行為⑤についての振り返りを繰り返していく(村井先生の講演資料を基に編集部で作成)。A: ActionL: Looking back on the actionA: Awareness of essential aspectsC: Create alternative method of actionT: Trial重要な点はどこにあったのか?これはどういう結果を生むだろうか?何が起きたのか?「8つの窓」で考えることでリフレクティブな思考を習得心がほぐれていないと気づきを受け入れられない「学びに向かう力」を育むリフレクションReflection × 教員312020 DEC. Vol.435

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