キャリアガイダンスVol.435
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立教大学の中原 淳教授が作成している「経験学習カルテ」を基に、酒井先生が独自で作成したワークシート。「経験したこと」「学んだこと」「学んだことを活かす」のシンプルな内容だが、焦点が絞られている。3学年担任・稲垣桃子先生(左)、個人でも10年以上リフレクションを続けている3学年主任・研究主任の酒井淳平先生(右)。教員は現場で学ぶことが多いからこそ、教科、世代を超えて意識化を~立命館宇治中学・高校(京都・私立)~村井教授のリフレクション研修を受け、実践的な研究にも参加している立命館宇治中学・高校。教員同士のリフレクションを学年団で実践している、3学年担当の酒井先生と稲垣先生に取組の内容、教員の変化について伺いました。時期やったこと内容1回目5月初め4月を振り返る●グループで語り合う。お互いによく聴くことがテーマ。2回目7月初め1学期の振り返りをカルテに記入● 回収し、まとめて平均値も出した。次回の会議で共有し、みんなで今後の方向性を確認。3回目9月終わり文化祭の取組について振り返る● 4人グループをつくり、グループ内で発表。聞いたメンバーはその1カ月間の発表者の成長や、がんばり、発表を聞いての感想を書いて発表者に渡す。● 学年で、お互いのがんばりを語り合い、まとめ合う雰囲気。さらにベテランの方のがんばり方や技を若手が聞く機会になる。4回目12月初め10月~11月のことを振り返る● クラブの日本一への挑戦、授業や面談など生徒対応のこと、課外での取組、家庭で学んだことなどいろいろなテーマが出る。● 3人一組。聞いたらコメントを書いて発表者に渡す。→どのグループも話が弾み、「いい話だった」との感想。5回目3月終わり学年総括リフレクション図3:1年間に学年団の教員同士で実施したリフレクション教員のリフレクション実践事例 2017年に酒井淳平先生が学年主任を任されてから、学年でのリフレクションに意識して取り組み始めた。 「教員は授業や行事などの現場で多くの学びや気づきを得ているのですが、その一方で現場では時間が刻々と流れていくので意識していないと忘れてしまいます。それを思い起こして、意識化し、自身に定着できるのがリフレクションの良さだと思います。また、自分の学年は教員の世代がバラバラで意図的に場づくりをしないとベテランの技が若手に伝わらない怖れがありました。リフレクションを学年で一緒に行うことで、個人の学びをシェアできるよう、リフレクションをやってみようと思いました」(酒井先生) 2017年度は2カ月に1回のペースで、担任会議の時間に振り返りを実施(図3)。「経験学習カルテ」というワークシートに、その回で振り返る期間に自身が経験した仕事内容をテーマに、「経験したこと」→「学んだこと」→「学んだことを活かす」の3項目を記入。それを基に3~4人のチームで語り合っている。 「テーマとする仕事内容は自由に設定できるので、ベテランはベテランなりに、若手は若手なりに抱えている課題が出ていました」(酒井先生) 「経験したこと」と「学んだこと」をセットで考えることで、そこに必ず自分の学びや強みが見えてくるという。ワークシートを記入することで、自然と自己肯定感が高まる手助けにもなっているのだ。 教員歴4年目の稲垣桃子先生は、リフレクションを体験する前は、何の役に立つのか懐疑的だったという。 「でも、ベテランの先生の考え方や、同年代でも自分より広い視野をもっている先生たちと語り合うなかで、自分が課題と思っていた『生徒に寄りすぎてしまうこと』を認めてもらったり、自分とは違う見方でアドバイスいただけたことで目から鱗が落ちる思いでした。20代の私が50代の先生方と対等に意見交換できる場であるのもありがたかったです。この3年間で自分の授業が一番変わったと思います。部活動や探究でも生徒を否定することがなくなり、一旦『何でそう思った?』と尋ねられるようになりました。結果として生徒にもリフレクションを促せるようになったのかな、と」(稲垣先生) 「リフレクションを実施することで、お互いの取組や思いを共有することができ、それはすごく大事なことだと思っています。個人でされていた素晴らしい取組と手法を、学年団全体で共有できたことがよかったです。また、同じ教科の先生同士だと教科のコンテンツ論になりがちですが、異教科でチームになることで、生徒の話がしやすくなると思いました」(酒井先生) リフレクションを始めてから、自然と職員室での会話が増えたことを両先生は実感している。 「リフレクションの場と時間は意識しないとつくれません。毎回20~30分程度なので学年主任などミドルリーダーが仕組みをつくっていけばどの学校でも取り組めるのではないでしょうか」(酒井先生)書くこと、語ることで、忘れていた自らの学びが意識化し定着するベテランの個のスキルを共有でき、対話が増えることで若手が成長※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 発行メディアのご紹介>> キャリアガイダンス(Vol.435)「学びに向かう力」を育むリフレクションReflection × 教員332020 DEC. Vol.435

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