キャリアガイダンスVol.435
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―先生のご専門やご経験を踏まえ、新学習指導要領で資質・能力の三つの柱の一つとして位置づけられた「学びに向かう力」とは何か。そもそも意欲とは何なのか、改めて教えてください。 生まれつき意欲の低い赤ちゃんなどいませんよね。「月曜日で雨だからブルー」なんて言うわけもなく、朝から元気。人間は生まれてすぐ、外部環境に働きかけ、できることを増やしていこうとします。つまり意欲的で有能な学習者として生まれるのです。しかも、道徳など教わっていないのに、困っている人を助けたいとか、相手を喜ばせたいなど、人と共生する傾向性さえ見られます。そうした有能さや傾向性は、言語が伴い、自然や社会の理ことわりを理解していくなかで拡大していくもの。人はそのように発達するのです。 ただし、生まれもつ意欲も、現実場面に即した行動として発揮するには多分にスキルが要求されます。例えば、「今、自分は何ができて、何ができていないのか。できていないなら、どう修正すればいいのか」といった客観的な判断力を欠くと、「やる気」だけが先走り「はやる気」で終わってしまうでしょう。ましてや、複雑な社会問題なす・まさひろ●1961年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程教育心理学専攻を単位取得退学、博士(教育学)。神奈川大学助教授、国立教育研究所教育方法研究室長、立教大学教授などを経て、2005年より現職。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会をはじめ数々の部会の委員として新学習指導要領の作成に重要な役割を担う。近著に『次代の学びを創る知恵とワザ』(ぎょうせい)、『ポスト・コロナショックの授業づくり』(編著、東洋館出版社)など。上智大学総合人間科学部 教授奈須正裕特集の最後は、上智大学の奈須正裕教授に登場いただき、中央教育審議会での議論や教育心理学などの知見をベースに、改めて「学びに向かう力」とはどういうもので、その育成にリフレクションはどう関わるのか伺いました。これからの教育活動を通じて「学びに向かう力」をどう育むか「学びに向かう力」とは何か意欲とはいったい何なのか342020 DEC. Vol.435

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