キャリアガイダンスVol.435
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452020 DEC. Vol.435先生:何も書けていないようだけど。生徒:特にこれをやりたいっていうのが、ないんですよね。先生:そうか。無理に見つけようとすると、焦るよな。生徒:何でみんな、将来やりたいことがあんなに出てくるんですかね。先生:ちゃんと決めないといけないと思うと、確かに難しいと思うものだよね。でも、そんなに先のことではなくて、今、少しやってみたいなと思うことはない? 生徒:う~ん。この前、友達の動画作りを手伝って面白かったかな。 先生:いいね。自分だったら、どんな動画を作ってみたい? 生徒:看護師をこのまま目指すのか、最近ちょっと迷い始めていて。先生:何か気になることがある?生徒:中学からやっていたダンスで、スタジオの先生から本格的にやらないかって誘われて…。先生:それに挑戦することで、自分の人生はどんな変化があると思う?生徒:コンテストに挑戦したりして、刺激的。ただ、その分練習が厳しいから、看護師目指す勉強との両立は難しい気がする。先生:両立は本当に無理なの? どうしたら両立できるか、一緒に具体的に考えてみない?生徒:このまま内定先に就職していいのか、迷い始めて。先生:入社後の、どんなことが不安になっている?生徒:新型コロナで経営は大丈夫なのか心配だし、自分がやっていけるのかも心配。先生:じゃあまずは、心配なことと、逆に入社後に起きてほしいなと思う出来事を書き出してみようか。   (リスト化したものを見ながら)ここに書き出した心配なことを解消するためには、誰に聞けばいいだろうか? 調べてわかることはあるかな?(一緒に考えてみる) また、起きてほしい出来事の可能性を高めるために、今自分でもできるような行動を一緒に考えてみようか。<例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ>苅間澤先生のワンポイントアドバイス人との出会いがたくさん起きるそんな行動を後押ししたい『その幸運は偶然ではないんです!』J.D.クランボルツ、A.S.レヴィン著花田光世・大木紀子・宮地夕紀子訳ダイヤモンド社「偶然の出来事」がいかにして人生やキャリアに影響していくか。その出来事をいかに呼び込むか。多くの事例とともに解説されている。 クランボルツの理論は、バンデューラにより提唱された「社会的学習理論」に基づき、学習し続ける存在としての人間が強調されています。人は生涯学び続け、学びによって行動を変容させることができると説いています。そのため、キャリア支援者としての教師は、生徒に「新しい学習」を促す役割を担うことが大切になります。 この新しい学習で重要になるのが、さまざまな体験(成功も失敗も)であり、偶然の出来事の積み重ねのなかで、本人が気づき、学ぶことがキャリア形成に大きな影響を与えるといいます。そして、その偶然の出来事をただ待つのではなく、意図的に生み出すように積極的に行動し活かすという意味で、「計画された偶発性(Planned Happenstance)」を説きました。 出来事は、人が起こすものです。幸運も、キャリアも、人との出会いのなかで生まれてくるものです。クランボルツが強調している「行動」は、まさにそのような「人との出会い」につながります。だからこそ、生徒が、チャンスと捉えられるような人との出会いをたくさんもてるように後押ししたいものです。

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