キャリアガイダンスVol.435
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542020 DEC. Vol.435クや、2年生が1年生に学校案内や探究テーマ発表を行う「高北ナビ」、社会人や学生など約30人が参加して自身の経験を基に生徒と対話を行う「未来の教室」などを実施している。 その上で夏休み(今年度は11月)に「探究型インターンシップ」を行う。これは19年度に始めた取組で、職場での体験を通じて社会の実態を理解し、「2030年の社会をつくる仕事の未来」をイメージすることで、進路選択の視野を広げるのがねらいだ。昨年度は80件以上の企業や団体の協力により実施した。事前学習を経て、各自が興味ある分野や将来の目標と関連する事業所を選定し、直接受け入れを依頼。3日間のインターンシップでは、経営者や社員にインタビューも行う。実施後は、体験による自分の変化や、仕事の未来に対する考察などを一人ひとりがまとめ、ポスターセッションを開催。その内容を全協働で行ってきた。DNA代表理事の沼田翔二朗さんは、あららぎ探究推進部の会議にも参加し、生徒の相談に乗ったり助言したりしている。 「明確なグランドデザインがあるため、先生方と議論しても、どのような人を育てるために探究に取り組むのかという視点がぶれにくい。外部のコーディネーターとして非常にやりやすいと感じています」(沼田さん) では、現在のあららぎ探究プランは具体的にどのように実施されているか、3年間の流れを追ってみたい。 1年次初期は、自己開示が必要となる探究の実践に向けた、土台づくりという位置づけだ。クラスを安心して学び合える場とするための自己紹介グループワー員分収録し、「仕事図鑑」として製本する。 「実は当初、この活動がどれだけ役立つのだろうかという不安もありました。しかし実際やってみたら、ポスターセッションでは多くの生徒が目を輝かせて堂々と発表する。その姿を見て、いかに生徒たちが刺激を受けたかが伝わり、やって良かったと思いました」(志村先生) 1年次後半からは、本格的にテーマ探究に取り組んでいく。生徒は小さいころから興味をもっていた事や大切にしてきた事など自分の「原点」に目を向け、「AIと人間はどのように付き合っていくべきか」「児童虐待とこれからの福祉」「野菜を食べて世界を救おう!」といった個人テーマを設定。生徒は自ら企画してアンケート調査や実験を行ったり、関連する大学や企業・団体、個人などを探してフィールドワークに取り組んだりしながら、テーマを深めていく。今年度はコロナ対策のため、フィールドワークをオンラインでのインタビューに切り替えて実施した。 「積極的に外に出て活動する生徒が増えてきました。先輩の探究を共有しているので、それを参考に、年々自由度が上がっているように感じます」(志村先生) 教室では生徒同士でテーマを共有し、頻繁にディスカッションやグループワークを行う。また、テーマ決定やフィールドワーク実施の節目では、1年生を交えてクラス横断のポスターセッションを実施。2年次秋の台湾修学旅行では、現地の高校生に向けて各自の探究内容を英語で発表する。こうして多様な人々に揉まれながら、探究を深めていく。 そのなかで教員は、自身の知識や価値観に基づく「指導」ではなく、「伴走」を心掛けているという。生徒の設定したテーマに対しても「批評」はしない。 「ある生徒が『犬と話せるか』というテーマを設定したとき、私にはこれで探究ができるのかわかりませんでした。しかし生徒は、科学的に研究している人を探し出し、生体検査に基づく医学的アプローチや動物が人に与える心理的影響など、自分の目標である看護の分野に関連させながら探究を深めています。教員の感覚で良し悪しを決めてしまうと、生徒が自ら教員を越えていく可能性をつぶしかねない。それより一緒に面白がることが教員の役割ではないか、と考えるようになりました」(岡本隆司先生) 3年次では、こうして探究で取り組んできたことを小論文や大学進学の志望理由書として表現できるようにし、進路への接続を図る。 探究以外の面でも、設定した資質・能力を意識して日々改善を重ねてきた同校。生徒からは、「将来の目標が見えてきた」「自分で考えて行動するようになった」「挑戦する楽しさを知った」「本気でやりたいと思えば協力してくれる人がいるこ生徒の原点から出発する探究。指導や批評はせず伴走する未来の仕事のあり方を考える進学校のインターンシップを導入探究や授業、その他の活動が連動し生徒の学びに向かう姿勢が変化インターンシップ後に開催するポスターセッションによる報告会には、1年生のほか、2年生、受け入れ事業所関係者、保護者も参加する。高崎市役所水道局でインターンシップを行った生徒がまとめたポスターの一部。市役所でインターンシップに取り組む生徒たち。ほかにも地域のさまざまな企業や医療機関などで数人ずつ分かれて実施。少人数グループで、1年生が2年生から学校生活やテーマ探究について教えてもらう。1年生はこれからの学びがイメージでき、縦の人間関係もできる。高北ナビ探究型インターンシップ

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