552020 DEC. Vol.435とがわかった」「テーマ探究で学んだ思考方法を、授業や部活動でも実践するようになった」など、さまざまな気づきや成長を実感する声が上がる。 教員も、同校の教育活動の総合的な成果として、「授業や探究で自信をもって発表する姿が見られるようになった」「自分の意見を積極的に言える生徒が増えている」「やらされ感ではなく、自分の目標のために学習しようという生徒が増え、安心して宿題を出すことをやめられた」といった手応えを感じている。こうした生徒の成長について、志村先生は「殻を破る」というイメージで捉えているという。 「人は大人になるにつれて『自分はここまで』という殻を作っていくものですが、高校生はそれを破って進む段階。私たち教員は、『こうしなさい』『あれはダメ』と殻を固める関わり方をしないよう注意するとともに、教員だけでなく友達や地域の大人など多様な人が殻を叩く機会を充実させてきました。今、それが生徒に響きつつある。それぞれが殻を破るきっかけを掴み、大きく飛び立っていってほしいですね」 学校が進化するプロセスにおいて、大きな推進力となるのが管理職のリーダーシップだ。丸橋校長は、学校改革のリーダー育成のための外部研修に参加して自らのやり方を見つめ直すなど、試行錯誤しながら取り組んできたという。 「私から新たな提案を行うときは『5W1H』を意識し、特に『なぜ』これが必要なのかの丁寧な説明を心掛けてきました。また、先生方から自由闊達な意見が出るよう、一対一の対話を大切にしています。木村教頭が分掌間、教員間をつなぐコミュニケーションに力を発揮してくれていることも、物事をスムーズに進めるうえで大きいと思います」(丸橋校長) そのなかで、教員の前向きな取り組みが促進されているようだ。 「研修で共有されたほかの先生の話をヒントに、主体性やコミュニケーション能力を意識して、自分の音楽の授業に生徒の発想や企画を活かした活動を取り入れるようになりました」(小板橋玲子先生) 「実践してみたいことがあればやれる雰囲気があります。生徒に『失敗しながら成長しよう』とよく言いますが、我々も同じ。積極的に挑戦していきたいと思います」(岡本先生) 来年度について、木村教頭は「校長のリーダーシップから先生一人ひとりの主体性に軸を移す年にしたい」と展望を語る。丸橋校長は、これまで自ら担ってきたカリキュラム・マネジメント研修の企画・運営やグランドデザインの作成を、分掌業務に移行させていく考えだ。 「最近は会議でも先生方からどんどん意見が出てくるようになりました。任せれば私が想像する以上の活躍をしてくれる先生方だと思います。最初の仕組みづくりはスピード重視で私が主導しましたが、これからはミドルリーダーを中心に先入観なく取り組んでいってほしい。そのなかで、生徒に身に付けてほしい資質・能力を核とした教育活動を、さらに進化させていきたいと考えています」(丸橋校長)教員一人ひとりの主体性で進化し続ける学校に向けてやりたいことの芯が明確に自分はスポーツが好きで、小学生の頃からバスケットボールや陸上競技をがんばってきました。その経験を基に、探究では「スポーツを楽しむ・がんばるための靴選び」をテーマにしました。友人にアンケートを取ってみて、自分の足の形や靴選びに対する意識はあまり高くないことがわかったので、部活をがんばっているみんなの靴選びに自分の探究内容が役立つのではないか、という思いで取り組んでいます。そのなかで、自分のやりたいことの芯がはっきりしてきました。将来は、プロスポーツ選手を支える仕事がしたいと思っています。(2年 小板橋奏そうた大さん/写真左)目標に向かって自ら計画を立て実行市民に愛され住みやすいと思われる地域のあり方をテーマに、探究に取り組んでいます。リサーチやインタビューをしてみて、人によって望む地域活性化の方向は違い、いろんな人の立場に立って考える必要があると気づきました。将来、地元の活性化に携わりたいので、大学に進学し、幅広い分野に興味をもって学んでいきたいと思います。それには高校の勉強も大事。毎日、学校で配られた手帳を活用して勉強や部活のトレーニングの計画を自分で立て、信号待ちの隙間時間も使って実行しています。高校生になって「成長した」とはまだ言えませんが、「成長するぞ!」という気持ちで毎日過ごしています。(2年 小川陽ひより和さん/写真中央)何事でも「ハテナ」を追究する力を大切に小さいころから自然の中で遊ぶことが好きでした。川で見つけたカジカという魚が準絶滅危惧種であることを知り、「この魚を守りたい」と思ったことが僕の探究の原点です。自然の良さを知ることで自然を大切にする気持ちが育まれるのではないかと考え、子育て支援活動を行うNPOに協力を依頼して、昨年の夏、主に小学生を対象とした「100人キャンプ」を企画、実施しました。参加した子どもたちからは、自然の中で遊ぶ楽しさや魚の命の大切さなどの感想が聞かれ、手応えを感じています。自分の「ハテナ」を、いろんな人に協力してもらいながら、自分の力で少しずつ前に進めていく大切さを学び、教科学習や部活動でも自分の「ハテナ」を大事にして取り組むようになりました。大学では森林科学について学び、将来は自然を好きな人を増やす活動をしていきたいと考えています。(3年 花井波なみ実さん/写真右)Interviewテーマ探究1年次では「いかに自分の探究が魅力的か」を各自が作成したスライドを使ってグループで発表し合うなど、プレゼンの方法や傾聴の大切さを学ぶ。図書館や視聴覚室などに分かれ、スマートフォンを使って探究テーマに関連する専門家や企業にオンラインインタビューを実施。自然を守りたいというある生徒は「100人キャンプ」を企画。子育て支援活動を行うNPOに協力を仰ぎ、参加する子どもたちの意見を取り入れながら開催した。
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