●小誌で富士市立高校を取り上げた記事Vol.404 (2014年12月)2年生全員が市役所の職員として 地域の課題を発見し、 実現可能な解決策を提案する 「市役所プラン」Vol.415 (2016年12月)「探究に満ちた学校へ」 目指すべき学校像を具体化し、 校外を巻き込んだカリキュラムを設計北海道、山形、静岡を繋いでの座談会。開催前にはオンラインでもミーティングを重ねた。現在、登壇者を変えて2回目を開催することを検討中という。メタ認知 将来展望社会との繋がり自己肯定 スピーチ興味探究 課題設定社会問題 小論文プレゼン課題発見 仮説構築フィールドワーク課題解決 企画提案書籍検索 批判的思考多角的思考 論理的思考チームワーク便乗発展 批判厳禁情報収集 協働活動発散収束卒業生が紹介したキーワード5つの単元のねらい第5単元夢ここまでの学習を振り返ることで、気づきや自らの成長を自覚し、将来との繋がりを意識したスピーチの作成を通して、進路意識を高める第4単元究これまで身につけた力を活用して、自分自身で設定したテーマを探究することで、社会問題や自分の将来について視野を広げる第3単元活富士市の抱える課題に向き合い、解決策を検討し、プレゼンテーションすることで、地域の一員としての意識を高める第2単元論ディベートにチームで取り組むことで、多角的な見方や論理的な考え方を学び、コミュニケーション能力や協働性を高める第1単元序ブレーンストーミング、KJ法など、課題を見つけ、情報を集め、まとめて、表現するための基本的な方法を学ぶ3年次2年次1年次【課題の設定】体験活動などを通して課題を設定し、課題意識をもつ 【まとめ・表現】気づきや発見・自分の考えをまとめ、判断し、表現する【情報の収集】必要な情報を取り出したり、収集したりする 【整理・分析】収集した情報を整理したり分析したりする探究学習の進め方このサイクルを各単元で繰り返す夢究活論序必た収たりによって、目的・行動・結果を言語化できるようになりました」と手嶋さんは言う。 授業ごとの振り返りに加え1年次に個人で自分の好きなことや理想の姿を描く「ドリームマップ」、3年次の「自分スピーチ」も自身を客観視する機会だ。「今回のイベントもですが、僕は〝勢い担当〞を自認しています。自分の強みも弱みもわかっているから誰かと協働することができる。自分の課題を見つけて解決することができないと、もっと大きな活動もうまくいかないと感じています」と越膳さん。メタ認知の重要性を実感している故か「今は仲間もこれから社会人になり基礎を応用へ変えていく、学んだものをどう活かすか、という時。高校時代の探究が自分たちにどう生きているのか、先生を迎えて振り返りたいという思いがパッと湧いて」座談会の実行に至ったのだという。 究タイムを熱く語る卒業生3人が口を揃えて言うのは、最初から熱心だったわけでなく「ただ楽しくてのめり込んでいった」ということだ。楽しかったのは「絶対解がない」「自分で考える」「意見が尊重される」「考えた先に大きな気づきがあった」から。傾聴の文化が育っていく環境も大きく作用していたようだ。 長田さんは「大学で『よく頷くよね』と言われたのですが、富士市立の子はみんなそうでした。友達に『それ違う』と言われることはなく、先生方は『できるからがんばって、とりあえずやってみな』と否定しない。聞いてもらえるから、人の話も聞けるようになったんだと思います」と分析する。手嶋さんは「1年の担任の後藤先生が最初に板書したのが〝批判厳禁〞〝便乗発展〞〝質より量〞〝自由奔放〞。ブレストのグランドルールだったのですが、今でも私が人と関わる際の根本になっています」と言う。2人の担任だった後藤大輝先生は「心掛けていたのは生徒が楽しんで取り組めること。私自身も初めてで答えの見えない中、間違いを指摘するのではなく一緒に考えてきた」結果、生徒は自分たちで考えて動くようになった。こうした先生方の姿勢は現在も貫かれ「教科の授業と違い、究タイムは8年間やってもどう進めていけばいいのかわからないことが多い。でも、生徒が活動を通して判断力や課題発見・解決力、表現力をつける中我々も一緒に学んでいます。これからも先導ではなく伴走しながら進めたい」(永井厚史先生)、「卒業生が高校時代をポジティブに語ってくれたのが嬉しい。今後も生徒の学びを中心に考えていくことが大事」(斉藤雅まさし先生)と異口同音に語る。 究タイムがスタートして10年。連携の輪は大学や企業、NPOに広がった。また、課題を意識して主体的に解決しようとする生徒が多いという実感を先生方はもっている。座談会を終えた越膳さんは「学び続けるというのは、適度に振り返って前に進むこと。今も富士市立から学んでいるし、これからも学びを得られると思った」と語ったが、行動力をもち、学び続ける姿勢は企画した3人だけに特別なわけではない。 今春の休校期間中、富士市立高校には卒業したばかりの生徒からたくさんの動画が送られてきた。コロナの影響で合格体験を語る会は中止になったけれど、自分たちが今できることを、と仲間を募った卒業生がいたのだ。高校での成長を振り返り「こんな力がつくよ」「がんばって!」と後輩に語りかける内容が多かったという。教師が伴走者となり他者を尊重する姿勢が育つ■ 総合的な探究の時間「究タイム」の3年間592020 DEC. Vol.435
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