キャリアガイダンスVol.435
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クションを体験していない」ことが一因にあると思います。リフレクションや振り返りを生徒には求めるけれど、自分は経験したことがない先生は多いように感じます。まずは、教員自身がリフレクションの主体になってやってみるべきです。最近はリフレクションを体験できる実践的な研修も増えてきたので、そうしたものに参加するのもよいかもしれません。研修会でなくても、リフレクションやフィードバックは「やったこと」「経験したこと」に対してすることで、どんな経験でもリフレクションの対象になり得ます。先生方も日々の教育活動での経験を自分でまず振り返り、他の先生からのフィードバックを受けてみると、自分では思い至れなかったことに初めて気づくことも多いと思います。 また、日頃、人にリフレクションを促す立場だと、自分自身がスカスカになってしまう感覚があります。だからこそ、あえて自分がリフレクションをする時間を設けるといいと思うのです。その往還が必要なんです。 リフレクションを実施する際には、対話だけでなく「書く」ことが重要です。言語化する過程で「考える」ことになるからです。また、他者にフィードバックする際にも、対話だけでは集団圧力で言いにくいことも、「一旦文章で書いたことを読みあげる」なら言いやすくなります。 書く際のワークシートは、考えなくても書ける穴埋め的なものではなく、考えなければ書けない問いが必要です。振り返る焦点を絞ったり、次のアクションを具体化させる問いにしたり、思考に振った問い・感情に振った問いの両方を盛り込むなどです。結局、学生に何を考えさせたいのでしょう。そのうえで、どんな行動を変えて欲しいのでしょう。教師は意図をもって問いを選ぶ必要があります。 多様な問いと向き合い、他者からのフィードバックを受ける過程で、「ズレ」を感じることがあります。その「ズレ」こそがリフレクションの種なのだと思います。「自分と相手のズレ」「自分が考えていることと相手から見た自分のズレ」「やっていることと感じていることのズレ」などを感じたときに、その理由や解決策を考えるようになるからです。ズレをたくさん発見していくことで、起きたことの問題点や原因が腑に落ちてくるようになります。私自身はズレがたくさんあるようなリフレクションを心掛けています。 そして、リフレクションは1回で終わりではなく、繰り返していくことに意なかはら・じゅん●1975年生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院を経て博士(人間科学)。メディア教育開発センター(現放送大学)、マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学准教授などを経て、2018年4月より現職。立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース主査等を兼任。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発を研究。立教大学 経営学部中原 淳教授多様なズレを発見することで現象が腑に落ちていく「学びに向かう力」を育むリフレクションリフレクションは教育活動になぜ必要なのか?92020 DEC. Vol.435

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