キャリアガイダンスVol.435_別冊
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 主体性育成のための仕掛けは、エディター養成プログラムのようなPBLだけではなく、英語の授業にも埋め込まれている。今年から開始された経営学部1年次必修の英語教育「SANNO English Program」は、主体的・自律的学習者を育成するという面でも画期的だ。 まず学生たちの反応を授業受講後のアンケートから見てみよう。 このアンケートからは、英語の上達だけでなく、学生が主体的に取り組むようになった姿も読み取れる。それはなぜか。筆者は、日本の高校までの英語教育の問題点は、多くの場合、伝わらないから使えない、使えないから面白くない、面白くないから英語が嫌いになる、という悪循環にあると考えている。 この悪循環を断ち切るように、まずは英語は使えなければ意味がないという考えを出発点に置き設計されたのが「SANNO English Program」である。 このプログラムは、「発音の鬼」として知られるリチャード川口先生(同大・客員教授)と産業能率大学が共同開発したものだが、大学側から開発に参加した米元洋次専任講師は「英語は使ってみて、それを振り返り、自覚するというサイクルが重要です」と語る。学生が使う場面を意識しつつ学べること、実際に英語を使う場面が用意されていることが決定的に重要なのだ。それがなければ、モチベーションももちにくいと指摘する。 具体的に内容を見てみよう。授業は1クラス20人以下の少人数で、週2回、1回100分で行われ、通年で全56回開講される。毎回の授業時間の約半分が発音のトレーニング、残り半分は英語表現(前期)や英語脳を鍛える(後期)ことにあてられる。リチャード川口先生が出演する映像教材を視聴し、その後、クラスを担当する教員が教室で展開。ペアワークなどでロールプレイをしながら学んだ発音や表現を実際に使ってみる。さらに学習アプリ「産能大発音道場」を使用し、授業内外で発音の徹底習得を目指すというのが基本構成だ。 後期では英語脳を鍛えるため、英語を使うためのマインドを学んでいく。例えば、自信をもって話す、間違っていても気にしないという心構えから、会話をとめないためのテクニックを理解していく。学生たちは修得したテクニックを駆使し、1分間会話を止めず英語で話すトレーニングなどを行うことで英語でのコミュニケーションスキルを向上させていく。ほかにも伝えたいことが思いついたら、一番伝えたいことは何かを考え、簡単な日本語に直してから知っている英語に変換する練習を積む。知っている単語でも伝えたいことが伝わることを理解することで、アウトプットすることへの苦手意識を克服していくのだ。 今年始まったこの新しいプログラムは、コロナ禍でZoom授業となったが、ブレイクアウトセッションなどを使いこなして、リアル授業に劣らない授業のクオリティが維持されている。そうした取組もあって、冒頭のアンケートにおける高い評価に結びついているのである。 学生に常に英語を使う場面を意識させ、「通じるから使えるし使いたい」「使えるから楽しいし好きになる」という好循環を生み出している。英語を話すことを「自分ごと」にし、本物を体験することで、学生を主体的・自律的学習者へと育んでいる好例である。米元洋次専任講師●授業受講後のアンケート(N=92)<授業を受ける前>●英語に対する意識苦手・どちらかというと苦手<前期の授業を受けた後>●英語が好きになった非常にあてはまる・あてはまる(※同解答)●発音が上達した●表現力が向上した●ヒアリングが向上した●英語を話すことに抵抗を感じなくなった 発音や表現のインプットだけでなく、アウトプットの機会が多くあるので英語を話すことへの抵抗感が吹き飛んでしまう、これまでとまったく違う授業です。 発音を学ぶ際は口の動かし方、舌の使い方など、動画でわかりやすく学ぶことができました。先生が一人ひとりの発音を聞いてアドバイスをしてくれるのと、アプリ「産能大発音道場」で練習することで、発音が良くなっていることが目に見えてわかり、モチベーションが高まりました。また表現レーダーを使って意味合いの強弱や、表現の丁寧さの度合いなど、辞書には載っていないニュアンスを知ることができたので、学んだ表現をすぐにでも使ってみたいと思いました。 この授業を受けた後は、ラジオやYouTubeで流れる英語が自然と耳に入ってくるようになったので発音や表現だけでなく、ヒアリング力も向上していると実感しています。加藤藍野さん(東京都立武蔵高校出身)7Vol.435 別冊特集

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