キャリアガイダンスVol.436
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にしたいと思いました。―そうした生徒の可能性が広がるよう、できることはあるでしょうか。吉岡 授業でめちゃくちゃ失敗させたいですね。「わからない」ということに一人ひとりがちゃんと向き合えるように。数学の授業では、問題を解くときにグループで質問し合える環境にし、正解が出たら次ではなく、「何か困っていることはない?」とおのおのが弱さを出すことを僕自身も歓迎しています。授業の最後には、生徒自らが作問してペアで解き、その過程でも自分のわかっていない部分に気づくようにして。黙ってノートを書いて満足している生徒への僕なりの挑戦です。授業の感想で「わからないと言えることが大切だとわかった」と書いてくれたときはすごく嬉しかったです。大城 自己表現できる場を増やしたいと思っています。それぞれの生徒が個性を出し、私たち教員がそれを発見し伸ばしていけるように。公民の授業では、意見を発表する機会をつくり、感想を書くコメントカードも取り入れています。また、ルールだからといって声を出しきれずにいる生徒たちに「自分たちの声が反映される」とも感じてほしく、生徒指導部では、校則の見直しを生徒と共に進めています。田中 まだ守ってもらえる立場だからこそ「失敗してもいいんだよ」という空気をつくり、学校の中だけにとどめず、外にもどんどん出したいです。「間違えたら」と正解がわかるまで様子見がちな生徒にまず動いてみることを、そして教員だけでなく多様な人から一つの「枠」に収まらず学ぶことを体験してほしいので。本校は総合の時間やインターンシップで、生徒が地域の人や企業と関わる活動を進めています。実社会のなかで「自分でやってみた」経験が、生徒の自信につながるのを感じています。神谷 生徒がやりたいことをやれる場にし、「興味開発」をできるようしたいです。言われたことをやれば幸せになれる、という時代ではなくなった今、何をするかは自分で見つけるしかないと思うからです。そのために地理の授業でマイプロジェクトに取り組んでいます。生徒が自分たちでテーマを決め、課題に挑んで発表するのですが、地元の名産を使ったスイーツを企業と共同開発したりと、高校生のすごさを改めて感じています。生徒に任せてみよう、と思うようになったのは、東日本大震災がきっかけです。被災地のボランティアに勤務校の生徒を連れていっていいか、現地の方にためらいがちに訊いたら「こっちでは小学生でもやってるよ。先生、生徒の力を信じてあげてよ」と言われ、頭をガーンと殴られた気がしたのです。実際、被災地での生徒は頼もしく、我々がもっと生徒を信じないとダメだと思いました。大城 うちの生徒たちは、自然豊かで人も温かい地元が大好きなんですね。先生方のお話を聞いて、地域とつながれば生徒の学びはさらに広がるんだ、私もチャレンジしてみたいなと思いました。それと、生徒の自己表現と言ってきましたが、考えてみれば私たち教員も以前より発言しなくなったと思うのです。職員会議などで、教員も本音で意見をぶつけていく必要性があるように感じました。神谷 同感です。「子どもは大人の鏡」と言いますし、生徒よりも前に、教員がまず意見を出し合いたいですね。「そもそも何を目指しているんだっけ、本当にこれでいいの?」と、我々も思考停止せずに、いろいろなことに挑戦していけたらと思います。生徒がやりたいことをやれるようにしたい生徒を信じて、我々も挑戦を (神谷先生)102021 FEB. Vol.436

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