キャリアガイダンスVol.436
11/66

くやこの花中学校・高校に入学して部活動を選ぶ際に、数学研究部の体験入部がとても面白くて入部したんです。小学校までは科学の方が好きだったのですが、部活で数学に目覚めた感じです。顧問の先生は普段の授業もわかりやすく、中学生の頃は、何となく将来は学校の先生になれたらいいな、くらいに思っていました。 中学・高校と数学にのめり込んでいて成績も良かったのですが、大学で数学を学ぶことは研究職になるイメージが強く、自分がしたいのはそういうことなのか、高校2年になって進路に迷いを感じ始めてモヤモヤしていました。それで、学校で募集していた「犬島サマーキャンプ2017」に参加することにしました。学校の任意活動に参加するのって、大変だし、目立ちたくないので勇気がいることだったのですが、自分の進路を一旦リセットしたい気持ちだったので、何かを見つけられるかもと思ったんです。 「犬島サマーキャンプ」は複数の学校が集まった横断プロジェクトで、瀬戸内海にある犬島の社会課題を現地の人との交流のなかで見つけて、解決策を考えるものでした。それまで都市部でしか生活したことがなかったので、キャンプに参加したことで本で見聞きしていた高齢化や過疎化が「本当にあるんだ」と肌感覚で掴めたのです。高齢化だけでなく、社会課題というのは本の中ではなく現実に存在することなのだと初めて腹落ちした感じでした。 それ以来、自分は数学が好きだけれど、その力は社会問題を解決する方向に使えないだろうかと、視野を広げて考えるようになりました。犬島から帰ってから、自分の迷いをふっきるために、家にあった『学問事典』で数学に関係する学部で社会にも近い学部がないか探しました。そこで見つけたのが経済学部だったのです。 そのときふと、現代社会の授業を思い出しました。経済史に哲学が関係していたり、「こういうことを考えるのは面白い!」と思える授業でした。数学が好きな自分は理系で、経済学部は文系の学部だと思い込んでいましたが、もともと地歴公民科にも興味があったんだな、といろんなことがリンクしていきました。 今の自分をつくった大きなターニングポイントは、数学研究部との出会いと「犬島サマーキャンプ」だったと思います。でもそれ以上に、咲くやこの花高校の先生方が、自分が興味をもてるような授業をしっかりとしてくださっていた日常の積み重ねからの影響が一番大きかったと思っています。「生徒のやりたいことが授業の中にある」って、本当はすごく大変なことなのだろうと今思うと感じますが、自分自身は広がった視野が授業での学びとつながったことで、本当にやりたいことに確信をもつことができました。数学好きが経済学部へ学外活動と日常の授業がリンクしてやりたいことに確信がもてたプロフィール●2001年生まれ。小学校の頃から科学系に興味があり、中学から専門的な学びができることから、咲くやこの花中学校・高校に入学。得意な数学を社会で活かしたいと経済学部を志し、2019年京都大学経済学部に入学。咲今の私をつくった高校時代のターニングポイント大阪市立咲くやこの花中学校・高校卒北村幸太さん取材・文/長島佳子卒業生が語る(右)高齢化した島の社会課題を探り、解決策を考える体験が数学以外への興味を広げた「犬島サマーキャンプ」。(左)犬島サマーキャンプでの体験を、小誌主催のセミナーで発表した。「まじめで素直でおとなしい」生徒の可能性をどう拓く?今の私をつくった高校時代のターニングポイント112021 FEB. Vol.436

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る