キャリアガイダンスVol.436
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〝生徒の可能性を拓く〞高校実践事例「まじめで素直でおとなしい」生徒が、何かのきっかけで大きく変化していくことがあります。教育目標や育てたい生徒像に合わせ、さまざまな取組を行う4つの事例校をご紹介します。 岡山県津山市に立地し、普通科、食物調理科と五年一貫の看護科・専攻科をもつ多様性が魅力の津山東高校。「行学一如」を校是とし、机上の学びだけでなく実践に重きを置く教育が特徴。10年以上前から地域での社会貢献活動に積極的に取り組んでいる。2011年、2012年には県教委の総合的な学習の時間の推進校に選ばれ探究学習に力を入れてきたが、地域活動への参加は一部の有志にとどまっていた。これを、全員参加の取組とするため、2015年度に委員会を立ち上げ、総合的な学習の時間を再編成。2016年度から、地域で学ぶ課題発見解決型の探究学習「行ぎょうがく学」を、1年から3年まで全員参加でスタートした。 「『行学』をスタートするにあたり、全教員で育てたい生徒像を議論して導き出したのが、『カラを破ろう!人とつながろう!』というスローガンです」と園田哲郎校長。主体的な学びと協働的な学びにより、社会に貢献できる人材を育成したいという思いが込められている。その背景を、主幹教諭・進路支援部長の久常宏栄先生はこう語る。「本校に入学する生徒は、〝素直でまじめ〞。ポテンシャルはあるのにがんばりきれない、『勉強も部活もそこそこで、高校生活が楽しければいい』という生徒が多かった。もっと突き抜けてほしかった」 そのためにどんな仕掛けが必要なのか。鍵となったのが地域連携だ。これまで有志を中心に行ってきた地域連携活動で、「教室ではおとなしくて目立たなかった生徒が、学校の外では大人と上手に接したり、活動を通して自己肯定感を高め、大きく成長する姿を多数見てきました」と久常先生。この活動を全員参加の探究学習にすれば、生徒たちは必ず変わるという確信があった。 「学校という狭い世界にとどまっていないで、外に出ていろいろな価値観をもつ大人と出会う、そこで自分の意見を言う、地域の人たちと一緒に何かを創り出す。その過程で、自分にもできる、自分も社会を変えていけると実感してほしい。そこから自分のやりたいことを見つけ、『なんとなく大学を選び、なんとなく就職する』という流れを変えたかった」 過去に、進学・就職した卒業生が、思いと現実のずれを感じて進路を変更する姿を見てきたという久常先生。「社会に出る前に外の世界と関わり、成功や失敗も経験しながら仲間と協働し、問題解決できる力を身につけさせたい」と、「行学」の狙いを語る。 「行学」は、生徒が地域に出向いてフィールドワークを行い、そこで見つけた地域の課題や魅力について、課題解決あるいは魅力発信の方法をグループで考え、中間発表でのアドバイスを基に実践し、ポスターにまとめステージで発表を行う。このプロセスを通して、コミュニケーション力、深く考える力、さまざまな視点から考える力、協働する力、実践する力、課題発見解決力、論理的思考力、発信力、変化に対応する力を育てていく。これまで、地域の子どもとお年寄りが集う「段ボール釜でピザつくり」、観光客集めのための「地元特産のきゅうりを使ったジェラートづくり」など、さまざまな取組が実現している。 企業や地域の人にアポイントを取るのも、インタビューを行うのも生徒。教員は、事前の下準備や必要に応じたサポートはするが、基本的に手を貸さない。「同行すると先生の顔色を見たり頼る気持ちが出てしまうので、同行もしません」と久常先生。グループ分けは取材・文/石井栄子自分で考え、他者と協働し問題解決できる生徒地域に出向き、地域の課題や魅力を発見後列中央:園田哲郎校長、右:久常宏栄先生、左:地域コーディネーター三宅康太さん1948年に設立/普通科(単位制)・食物調理科・看護科・専攻科/生徒数659名(男子180人・女子479人)学校データ津山東高校 (岡山・県立)地域に飛び出し、失敗や成功経験を経て、自走する生徒を育てる142021 FEB. Vol.436

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