キャリアガイダンスVol.436
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長・小川建治先生は、「自分とは縁遠いテーマだからこそ、生徒は自分の視野の狭さ、当事者意識の必要性に気づくきっかけになった」と振り返る。 2学年では「みんなごと化」を掲げ、グループで課題解決に取り組む。内容は、起業創造科では地域や企業の課題、企画科は開発途上国の社会課題を解決するビジネスプラン作成など。 「本校の考える『みんなごと化』とは、単に集団でやることではなく、当事者意識をもつ一人ひとりが自分の強みを活かして貢献し合うこと。一人ひとりの『じぶんごと化』でできることは小さくても、『みんなごと化』すれば地域を変えられるぐらい大きな力になるはず。生徒たちは、メンバーの意見の違いや温度差の壁に何度もぶつかり、試行錯誤しながら、着実に成長しています」(北川先生) そして3学年では、自分たちで考えた課題解決策の〝実践〞を目指し「課題研究」に取り組む。昨年度は、伏見稲荷大社の観光客によるゴミ問題に対し端切れ布を使ってごみ袋を制作し配布する活動や、オーバーツーリズムに 京都すばる高校は商業と情報に関する学科を設置する専門高校だ。本稿では、2019年に従来の商業3学科を改編してスタートした、起業家精神で地域社会をデザインする人材を育成する「起業創造科」と、企画力で京都と世界をつなぐ人材を育成する「企画科」の取組に注目したい。 入学する生徒について、同学科の教員は「素直」「まじめ」といった特徴を拳げる。入学時、生徒の自己認識を聞いたアンケートの結果では、「傾聴力」が突出して高く、「主体性」や「発信力」などは低めだ(図2)。そんな生徒の傾向を踏まえて、新学科では、従来から力を入れてきた地域協働を発展させ、商業の現場や多様な大人に関わる機会の一層の充実を図っている。 「目指すのは、当事者意識・探究力・論理的思考力・協働力を備え、ビジネスの視点から京都の課題を発見、解決していくことのできる人材の育成。知識詰込み型の学習から脱し、商業の知識・スキルをベースに実社会とつながり地域課題に生徒主体で取り組む学びを推進していきたいと考えています」(地域協働推進室長・北川博士先生) 地域協働の中心的なプログラムは、専門科目や学校設定科目で展開する「みんなごと化プロジェクト」(図1)。地域課題を「じぶんごと」と捉え、「みんなごと」として取り組み、実際に社会を変化させるところまでを目指す。 まず、1学年では「じぶんごと化」を掲げて、学科ごとのテーマに取り組む。19年度、起業創造科では、個人商店を訪問して「京都伏見の商いリサーチ」などを実施した。同科長・河野翔太先生は「商業の知識やスキルが活用されている現場を知り、教室の学びと社会のつながりを実感することでじぶんごと化につなげたい」と話す。また、企画科では、近隣に日本とアフリカの遺児のための教育施設が開設予定であることを受けて、地域住民にアフリカを紹介する企画の提案に取り組んだ。同科取材・文/藤崎雅子素直でまじめな入学者を地域課題解決の当事者に当事者意識をもつみんなが周囲を巻き込み課題解決後方右から地域協働推進室長の北川博士先生、起業創造科長の河野翔太先生、企画科長の小川建治先生、地域協働学習実施支援員の三木俊和さん1985年創立/起業創造科(1・2学年のみ)・企画科・会計科(3学年のみ)・ビジネス探求科(3学年のみ)・情報科学科/生徒数860人(男子430人・女子430人)/令和元年度「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」(プロフェッショナル型)指定校。学校データ図1 京都を支える人材育成 3年間の流れ起業創造科企画科起業家精神で地域社会をデザインする企画力で京都と世界をつなぐ1年生会計の視点から、地域の諸課題に気づく「ビジネス基礎」「簿記」マーケティングの視点から、地域の諸課題に気づく「ビジネス基礎」「マーケティング」2年生地域のソーシャルビジネスを体感する「起業マネジメント」(学校設定科目)グローバル経済やインバウンド市場を体感する「グローバルビジネス」(学校設定科目)協働して「住んでよし」の京都を創る「起業マネジメント」「課題研究」3年生協働して「訪れてよし」の京都を創る「グローバルビジネス」「課題研究」『住んでよし、訪れてよし』の持続可能都市京都を支える人材・魅力あるまちづくりのリーダーへじぶんごと化みんなごと化京都すばる高校 (京都・府立)地域課題をまずは〝じぶんごと化〞、そして〝みんなごと化〞して解決に取り組める人を育成162021 FEB. Vol.436

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