キャリアガイダンスVol.436
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 高松第一高校は普通科と音楽科を設置する県内有数の進学校だ。国際社会や地域で活躍する人材の育成を目標とする同校の教員は、生徒が潜在的にもつ大きな可能性を拓く必要性を感じているという。 「本校の生徒は何事もうまく行えますが、もっと自分から動き、積極的に〝失敗〞してほしい。そして、へこたれずにもう一回チャレンジしてほしいですね」(SSH研究開発主任・佐藤哲也先生) 「社会に出たら、与えられたことをやるだけでは不十分。自分で考えて行動する力を身につけてほしいと思います」(進路指導主事・湊 博之先生) 同校は2010年、自ら考え判断し行動できる人材の育成を掲げてスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定校となり、理科を中心にアクティブラーニング(AL)型の授業に取り組み始めた。生徒の変容に手応えを感じ、15年のSSH2期目から全教科に対象を拡大。同3期目(図1)の現在も、各教科で身につけたい力を設定し授業改善を進めている。 「ある教科は苦手で積極的に動けない生徒が、別の得意教科では活躍できることも。それで『自分にもできる』と思えれば、ほかの場面でもチャレンジできるようになる。その機会を多くの授業につくり、幅広い個性の生徒が一歩を踏み出す後押しをしたいと思います」(湊先生) 同校が目指す授業とは、「生徒同士が学び合う場」となることだ。その第一歩として、「間違えてもええんやで」という雰囲気づくりを大切にしている。 「まずは自分の考えを、なるべく筋道立てて発言してみる。正解かどうかは問わない。それからほかの人の意見を聞いて腑に落ちたり、新しい考え方に気づいたり…そんな生徒同士の学びの相乗効果をねらっています」(佐藤先生) 湊先生は、簡単なペアワークから徐々にグループの人数を増やすという。 「おとなしい生徒も発言のチャンスを得やすいよう、初期はグループで自由な議論に入る前に一人ずつ順にひと言発言する時間を設けています。回数を重ねるうちに、そのような時間は不要になっていくものです」(湊先生) こうした発言しやすい環境を土台として、各教員がパフォーマンス課題や発問を工夫した授業を行い、生徒の「面白い」と思うことから本気を引き出そうとしている。例えば今年度の国語科では、「羅生門」の単元で「下人は有罪か」の模擬裁判を通じて登場人物の心情の変化を捉えながら小説の面白さを味わい、評論文の読み解きにはジグソー法を活用し理解を深めた。また、短歌の作品世界の演劇化にも挑戦。グループで意見を出し合って脚本を作成し、作者の心情や背景を堂々と表現した。 「学びが与えられるものから自分ごと取材・文/藤崎雅子〝与えられて動く〞から〝自ら考え行動する〞へ多様な仕掛けで本気の学びへいざなう左端が進路指導主事の湊 博之先生、右端がSSH研究開発主任の佐藤哲也先生図1 SSHを活用した人材育成の構想図1928年創立/普通科・音楽科/生徒数908人(男子342人・女子566人)/令和2年度指定スーパーサイエンスハイスクール(3期目)。学校データ知への好奇心、探究心を身につけた創造的人材を育成する国際社会や国家、地域で活躍できる心身ともにたくましく、自主と自律に拠る自由の精神を備えた科学技術系人材、女性研究者・技術者生きる力=リテラシー●知的好奇心、探究心●読解力、科学的表現力●科学的コミュニケーション能力●基礎学力●論理的思考力、推論力●自己調整力●問題発見能力、問題解決能力●批判的思考力●プレゼンテーション能力●国内外の外部機関や卒業生・地域との連携 ●課題研究・自然科学講演会・関東合宿・海外研修・理系女子生徒育成プログラムひろげる視野・視点●専門深化型アクティブラーニング ●教科横断型アクティブラーニング ●パフォーマンス課題・パフォーマンス評価かんがえる授業●専門深化型課題研究(特別理科) ●教科横断型課題研究(理系・国際文科・文系) ●専門深化型課題研究(音楽科)ふかめる探究間違いを恐れず学び合う授業を組織的に推進し生徒の〝本気〞を引き出し伸ばす高松第一高校 (香川・市立)202021 FEB. Vol.436

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