になると本気が出てくる。しかし、これをやれば一律に生徒が変わるという手法はありません。多様な手法を取り入れることで、今日は何をやるんだろうという気持ちで授業に臨み、どこかで『面白い』と響いて本気で学びを求める力になればと考えています」(湊先生) また、理科では問いの設定を重視。あえて誤概念が生じやすいポイントを問いにし、深い思考のきっかけを作る。 「できる子が間違った予想をすると、みんな引きずられて間違えて、実験してみると違う結果になる。生徒から『あれ?なぜこうなるの?』といった声が上がると『よし!』と思いますね」(佐藤先生) こうした授業改善のために、AL型授業の研究者による教員研修や、自主勉強会の毎月開催などをしてきたが、数年前からはチームで授業力向上にあたっている。全教員が3〜4人に分かれ、若手の柔軟性とベテランの知識・経験を融合させながら、教材開発やパフォーマンス課題の検討などを行っているのだ。 「一人より複数で考えたほうがさまざまなアイデアが出てくる。たくさんの気づきをもらっています」(湊先生) 多様な視点、多様な手法の導入に全校的に取り組む同校では、今年度、総合的な探究の時間のリニューアルにも着手。「SSHで理科の探究活動を行ってきましたが、理科だけではなくさまざまな教科の探究を通して、一つの物事を異なる教科の視点を活かし多彩なアプローチができる人になってほしい」(佐藤先生)と、各教科が設定する探究テーマに取り組む「未来への学び」を立ち上げた(図2)。生徒は文・理別の4テーマに取り組み、最後に最も興味をもった1テーマをさらに深める。例えば地歴公民科では「SDGsに関連した提案」、生物科では「ダンゴムシは学習するか」、体育科では「新しいパラスポーツ種類の開発」といったテーマを設定している。 「その効果をさらに高めるため、来年度は一部の時間で文・理を横断したテーマに取り組めるプログラムを検討しています」(佐藤先生) 全教科のAL型授業を推進して6年目。授業中の生徒の様子は年々変化してきたと佐藤先生は振り返る。「教員が教え込まなくても生徒同士で考え意見交換するなかで結論を導き出すことが増えた。生徒ってこんな力があるんだと知ることができた」。グループディスカッションでは数年前に比べて発言を恐れない生徒が増え、「最近では自分たちで討論の状態を分析して場をリードする生徒もあり、深い議論ができるようになった」と湊先生。生徒の変化は部活動にも表れ、指定された練習メニューをこなすだけでなく、生徒同士で話し合って活性化を図る例も増えている。また、探究活動の成果を発表する全国大会にこれまで興味を示さなかった生徒たちが、今年度はチャレンジしたいと何組も手を上げた。 今後は各教科で生徒が一層深く学び合う授業を推進していくとともに、教科横断型の授業にも挑戦する計画だ。さらに学校行事の見直しも検討している。 「教員の『学ばせたい』ではなく、生徒の『学びたい』から生徒自らが作るプログラムのほうが、生徒の本気が引き出せるのではないか。そんな生徒主体の活動を授業内外で充実させていきたい」(佐藤先生)根拠をもって活発に議論。チャレンジする生徒が増加(左)演劇を取り入れた現代文の授業。グループで作成した脚本を自ら演じ、短歌の世界を表現。(右)理科の実験の様子。入学時は記録を取ることに一生懸命だった生徒たちが、役割分担して積極的に動くように。※班はクラスを解体して編成/来年度は文・理横断テーマも検討中図2 2年生「未来への学び」の実施計画(2020年度)中学までは内気で、自分の考えを人に伝えることが苦手でした。でも、高校では周りの子がどんどん意見を言い、人の意見も受け入れてくれるので、「人と違う考えでも言っていいんだ」と私も発言できるようになりました。もっとさまざまなことに挑戦して、大学では留学するのが目標です。(1年生・利としくに國桜さや文さん)考える時間やグループワークが多い授業は、大変だけどすごく楽しい。苦手な数学の授業もがんばれるようになりました。課外では、先日クラスの有志とオンラインの模擬裁判選手権に参加し、他校生から多くの刺激をもらいました。今後も学校外の活動を積極的に行い、自分の世界を広げていきたいと思います。(1年生・沖山実みなほ菜帆さん)課題研究などで発表機会が多く、どうすれば人に伝わるかをよく考えるように。それはバレー部の活動にも活き、自分から改善点の提案やプレー中の声出しを心掛けたことで、部の明るさに役立ったと思います。将来はアプリ開発の仕事をしたく、チームでの開発に高校での経験が役に立ちそうです。(3年生・松井遥はるき暉さん)課題研究では「昆布の旨味を出す乾燥方法」をテーマに、みんなで意見を出し合って効率よく実験を進めることができました。そのなかで、以前は周りの意見に流されやすかった私も変化し、お互いの意見を主張し合うことを楽しむようになりました。(3年生・藤井陽ひなこ奈子さん)1回目2~4回目5~7回目8~10回目11~13回目14・15回目16回目文系クラス文系Aガイダンス国地公英美家体テーマを1つ選択してさらに深める時間クラス発表会文系B美家体国地公英文系C英美家体国地公文系D地公英美家体国理系クラス理系Aガイダンス物化生数理系B数物化生理系C生数物化理系D化生数物生徒インタビュー「まじめで素直でおとなしい」生徒の可能性をどう拓く?“生徒の可能性を拓く” 高校実践事例212021 FEB. Vol.436
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