キャリアガイダンスVol.436
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のを作ってきたんです。感動したので、「この魂を先生たちにぶつけてこい!」と、職員会議に乗り込ませました(写真)。先生方も驚き感動して、職員室はスタンディングオベーション状態。先生って、ついあれこれと生徒のために頑張りすぎるんですが、生徒を信じ、自分はサポーター役、見守り役に徹してフェードアウトしていくのが理想です。だって、主役は生徒なんですから。 今の世の中で求められるのは、スピーディーに転換・改善し、問題解決ができる力です。例えば、facebookの新しい機能やサービスは最初は穴だらけですが、利用者からのフィードバックを受けてどんどん改善し、結果的に良いものになっていく。「こうあるべき」という完成形を描いてからそこを目指すのではなく、まずはやってみる、フィードバックをもらう、試行錯誤しながら改善を続ける…というサイクルをぐるぐる回しながらより良いものを生み出すというのが、今の社会の価値創造のあり方です。 一方、今の日本には「こうあるべき」という思い込みにとらわれて身動きが取れなくなっている人や企業が多いように思います。譲れない信念はありつつも、いろんな意見・価値観や社会的なニーズ・情勢を受け止めて柔軟に変化していけるというのは、これからのVUCAの時代には不可欠な要素なのです。 生徒に限ったことではありません。先生自身にもマインドセットが求められます。大事なのは、「パーパス」「パッション」「フィロソフィー」です。先生は失敗できない、生徒に失敗をさせてはいけないというプレッシャーに押しつぶされそうになっていないでしょうか。失敗したって、させたっていいんです。だって、社会に出れば、成功することよりも失敗することの方が何倍も多いのですから、耐性をつけておく必要があるのです。 日本の学校の先生たちは、抱え込みすぎています。手放しましょう、楽しみましょう、枠を外してワクワクしましょう。生徒を中心に据えた学校づくり、学びづくりに共に取り組む勇者を増やしていくのが、私の夢です。共感していただけるみなさん、ぜひ一緒にがんばっていきましょう。に成績も大きく伸びています。 小さな成功体験の積み重ねも大事です。失敗して、試行錯誤を繰り返し、やっとうまくいったときって、小さなことでも達成感は大きいですよね。松下幸之助流の「やってみなはれ」の精神で、生徒がやりたいと言ってきたことに対しては基本的にやってみようと言っています。ただし、やりたいことについての企画書を作り、プレゼンをさせます。例えば、コロナ禍で中止になりかけた今年度の文化祭ですが、生徒の発案で実施することになりました。最初に生徒らが出してきた企画書やプレゼンは全然ダメだったので、どこがどうダメなのかというフィードバックとともに突き返しました。そしたら、次はすごいもうになると、他者も肯定できるようになります。自分に自信がついて互いをリスペクトできるようになると、変なマウンティングや闘争心がなくなります。こうして一部の生徒たちがリーダーシップを発揮しだし、みんなの意見を聞きながらボトムアップで変えていこうと動き始める。そうなると、あちこちで自分もやってみようという連鎖が起こり、全体の「文化」がじわじわと変わっていきます。できるはず、自分たちで変えよう…というオーナーシップの空気が醸成されていく。それを、狙っています。実際、本校の生徒たちは着実に変化しており、スイッチの入った生徒は結果的ひのだ・なおひこ●1977年生まれ。海外で幼少期を過ごし、帰国後は同志社国際中学・高校に在籍。同志社大学卒業後、学習塾に入社。2008年、奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。大阪府の校長公募制度に応募し、2014年に「地域の四番手」であった大阪府立箕面高校の校長に着任。全国の公立学校で最年少(当時)の校長として改革を推進し、着任3年目には海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出す。2018年に武蔵野大学中学校・高校校長に着任。2020年より武蔵野大学附属千代田高等学院校長を兼任する。「こうあるべき」から脱却し、マインドセットから始めよう取材・文/笹原風花 撮影/平山 諭日野田先生が校長を務める2校では、いずれも生徒が職員会議に参加し、文化祭についてのプレゼンテーションを行った。感染防止策など細部まで練られた企画案と熱意あるプレゼンに、職員室は感動に包まれたという。失敗したって、させたっていいんです。枠を外してワクワクしましょう「まじめで素直でおとなしい」生徒の可能性をどう拓く?社会、大学、高校現場からのメッセージ272021 FEB. Vol.436

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