キャリアガイダンスVol.436
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1929年に「前橋市立高等家政女学校」として開校。2019年に創立90周年を迎えた、県内屈指の長い歴史と伝統を誇る高校であり、前橋市唯一の市立高校。「進取・自律・創造」の校訓の下、真に社会に貢献できる自立した社会人の育成を目指している。90%以上の生徒が大学・短大、専門学校などへ進学。また、部活動も盛んで、女子バスケットボール部、弓道部、アーチェリー部は、全国大会の常連。前橋市立前橋高校(群馬・市立)まとめ/石井栄子 撮影/水野吾郎 2019年に本校に着任しました。職員室の雰囲気が明るく、生徒たちは真面目で礼儀正しく、言われたことはしっかりこなす素直な良い子というのが着任時の第一印象です。“素直な良い子”は長所ですが、一方で課題でもあります。今の良い資質を活かしながら、高校の3年間で、主体性、積極性、リーダーシップを伸ばし、社会に貢献できる自立した生徒を育てたい。そのために本校では、私の着任前から「地域活性化プロジェクト『めぶく』」という独自の探究学習を実践しています。 「めぶく」は、前橋市や地元の企業、大学などの支援・協力の下行っている全学年共通プログラムです。1年次は商店街インタビューや市内企業のフィールドスタディなどを通じて、身近な企業と世界とのつながりや、今の学びが自分の将来とどのようにつながるかを学びます。2年次は、1年次に集めた知識を駆使して考え、他者と協働しながら形にし、表現・発表します。今年度は市の協力も得て、模擬市長選挙や模擬市議会も経験しました。これらの活動で得た知識や経験を、3年次の進路選択へとつなげていきます。 探究学習が、単なる社会科見学で終わってはいけません。さまざまな立場の大人とつながり、世の中の仕組みや地域経済の成り立ちを学ぶ中で、自分は社会にどう貢献するのか、ありたい自分像を見つけることが目標です。また、探究学習と教科学習を相互にリンクさせ相乗効果を高めることも意識しています。 「めぶく」の活動を通じて、「3年次の進路選択が非常に主体的になった」と担任の先生方から声があがっています。本プロジェクトは、教科学習と探究学習が有機的に結びついた、体系的なキャリア教育と評価され、文部科学省・経済産業省が行う第9回キャリア教育推進連携表彰で優秀賞を受賞しました。 中学卒業見込み者が減少し続けるなかで、将来にわたって選ばれる学校であるために、世の中のニーズに柔軟に対応しながらさらなる特色化を図ることが急務です。持続可能な改革を進めるためには、校長のトップダウンではなく、教員一人ひとりが主体的に考え、さまざまな意見やアイデアを出しながら方向性を打ち出していくことが大変重要です。そこで今年度、若手教員らによる「将来構想委員会」を立ち上げました。委員会の検討に先立ち、ブレーンストーミングの手法を取り入れ、全教員で学校の将来像について話し合いました。これが発端となり、若手教員から多文化理解教育を行いたいと提案があり、急遽、市内で活躍する外国人の方々との交流会を実施することになりました。自分の意見が学校運営に反映されるという経験は、この教員だけでなく、学校全体の改革の気運を高めるきっかけになるのではと思います。 ICTを活用した授業変革も急務であり、教員主体で一丸となって取り組んでいます。 教員が個々の力を発揮し活躍できる環境づくりが校長の役割と考えています。あまの・まさあき/1965年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。小学校の頃から学校が好きで、教育の場に身を置きたいと思い教職を志す。1988年に外国語(英語)科教員として群馬県立前橋東高校に着任。新任の頃、ある生徒から「授業がつまらない」と言われたことから発奮し、授業改善に必死で取り組んだ。ここで6年間勤めた後、群馬県立高崎高校着任。13年間勤め、2007年より群馬県教育委員会事務局高校教育課にて指導主事として9年、教科指導係長として1年、補佐として2年勤める。2019年より現職。強いリーダーよりも調整型のリーダーが理想像。真面目で素直なだけではない主体的に行動できる生徒を育てる持続可能な改革を牽引するのはボトムアップ型の組織292021 FEB. Vol.436

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