高校生の就職者数は約20万人で、ここ20年ほど横ばいが続いている(文部科学省学校基本調査)。3年以内の離職状況では、大卒が32・8%であるのに比べ、39・5%(2017年卒)とその離職率は高い。 高校生の就職には、関係者の申し合わせで作られたルールが存在する。就職スケジュール、求人票および提出書類の様式など多岐にわたるが、一番影響が大きいのが「1人1社制」だ。選考開始後の一定期間は応募者1人につき面接を1社しか受けられない、という内容だ。2018年に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」では、この1人1社制について「高校生の職業選択の幅を狭めているのではないか」という懸念からそのあり方自体を検討することが示された。 しかしながら、仕組み以前の問題として、高卒就職の全体像はいまだ明らかになっていないことが多い。高卒就職経験者の就職活動やキャリア形成の課題、企業側の採用や育成課題、高校の就職支援体制の問題などにはどのようなものがあるのだろうか。 そこで本企画では、高卒就職の現状と課題について、若手高卒就職経験者(39歳までの高卒就職経験者。以下当事者)・高校・企業の調査から報告する。どうすれば高校生は「自分で選んで決めた」実感をもって働き始められるのか特別企画たつみ・さとこ●リクルートワークス研究所主任研究員。働くことと学ぶことのつながりをテーマに、キャリア教育や大人の学びを中心とした調査・研究を行う。これまでに、「分断されたキャリア教育をつなぐ。」「社会リーダーの創造」「社会人の学習意欲を高める」「『創造する』大人の学びモデル」「働く×生き生きを科学する」を発表。博士(社会科学)。辰巳哲子ふるや・しょうと●リクルートワークス研究所研究員。2011年経済産業省入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興支援、「未来投資戦略」策定に携わる。2017年より現職にて、若年労働市場、若手社会人のキャリア形成、高校生の就職・採用について研究する。一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。古屋星斗高卒就職者は大卒に比べて離職率が高いことが指摘されてきた。昨年、リクルートワークス研究所で実施した調査からは、「超早期離職」の実態や、就職先決定に至るプロセスが長期にわたるキャリア形成に影響することが浮き彫りになった。この特別企画では、高卒就職当事者・高校・高校生を採用する企業の3者に対する調査によって明らかになったファクトから高卒就職の実態、課題、展望を報告する。【高卒就職の流れ】高卒就職者数と新卒3年以内離職率の推移6/1~企業が求人申込書をハローワークに提出確認を受ける7/1~求人票公開主に夏休み期間応募前職場見学9/5~※応募書類提出9/16~※採用選考開始 ↓内定通知高校生の就職は例年、下記のようなスケジュールで行われている。まず、高校生の採用を行いたい企業が6月1日から求人申込書をハローワークに提出し確認を受ける。そして7月1日に求人票が公開される。生徒らは、求人票から応募する企業を検討のうえで夏休み期間を利用して職場見学に行くことが一般的である。9月5日以降、学校経由で応募書類を提出する。9月16日に採用選考が開始され、内定の連絡を待つこととなる。晴れて内定を得た生徒は卒業後、社会人としての第一歩を踏み出す。0510152025303540構成/江森真矢子1995年1996年1997年1998年1999年2000年2001年2002年2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2016年2012年2017年2013年2018年2014年2019年2015年2020年就職者(人)3年以内離職率(%)(万人)0102030405060708090100(%)学校基本調査(文部科学省)/新規学卒者の離職状況(厚生労働省)※2021年(令和3年)3月卒業の高校生採用の選考スケジュールは 応募書類の提出10/5~、選考開始→内定通知10/16~に変更※本グラフの「就職者」は、学校基本調査の「就職者」(2003年までと2020年)、「就職者」+「一時的な仕事に就いたもの」 (2004年から2019年)を集計352021 FEB. Vol.436
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