キャリアガイダンスVol.436
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調査概要 また、就職活動をした生徒の側も、自分で決めた実感をもつ者は少ない。図4は、自分で決めた実感について、4つの観点から尋ねたものだ。学科による違いはあるが、最終的な就職先について「自分で決めた実感」があるのは54・2%から61・3%だ。さらに就職活動自体の満足度を尋ねると満足だと回答したのは、26・0%から41・0%とかなり低いことが明らかになった。 就職活動の際の情報収集によって、入社後の課題を改善し得るのか。半年以内の離職率を就職前の情報収集量別に分析した(図5)。情報収集量は、「応募できる企業の数」、「実際の仕事内容についての情報」、「労働環境についての情報」、「入社後の育成・研修についての情報」について十分だったかどうか、得点を合計した。結果からは、情報収集が十分であると、就職・採用のミスマッチを軽減する効果があることが明らかになった。情報量が十分な状態になるほど、半年以内離職率が、13・3%から8・4%へと改善されていることが示されている。 では、何社調べればよいのだろうか。調査の結果(40ページ参照)からは、「1※社だけを調べ、1社だけ見学し、1社❶「高校卒就職当事者に関する定量調査」<以下「当事者調査」>目的:高校卒者の就業後課題の実態、及び在学時の就職活動・就職指導等の状況を把握するため/調査期間:2020年9月10日~9月14日/調査方法:インターネット調査(平成27年国勢調査による性別×年代×居住地別での人口動態割付にて回収)/調査対象:就業年数2年以上、初職が正規雇用者である39歳までの就業者、最終卒業校が高校の者(比較のため同様の条件で最終卒業校が大学の者を別途集計している)/回答者数:4,068名❷「高校の就職指導・キャリア教育に関する調査」<以下「高校調査」>調査期間: 2020年9月4日~9月28日/調査方法:質問紙による郵送/調査対象:全国の全日制高校 (普通科/工業学科/商業学科/総合学科)、1校における就職者数が5名以上の高校の校長 2,387名/集計対象: 317名(回収率13.3%)❸「企業の採用状況と採用見通しに関する調査」(2020年 二次調査)<以下「企業調査」>目的:全国の民間企業を対象に、新卒採用における求人動向を明らかにするため/調査期間:2020年10月7日~11月12日/調査方法:電話・FAXにて回収/調査対象:従業員規模5人以上の全国の民間企業7,200社/回収社数:4,516社(回収率62.7%)期化につながっている可能性がある(図2)。3年以内に離職しなかった者に比べ、3年以内離職者は非正規雇用期間、無業期間の割合が高い。 なかでも超早期離職者ではさらにその割合が高くなることがわかる。超早期離職者の場合、現在の仕事における雇用状況が非正規である者は35・6%だった。同じく、3年以上の非正規雇用期間があった割合は31・7%に上っている。 一方の企業側は選考プロセスにおいてどのような課題を感じているのだろうか。最も多くの企業が課題として挙げたのは、「生徒と直接話ができる機会が少ない」(42・8%)ことであった。企業が生徒の人となりを判断できる機会が限定されていることを示している。「自社の魅力を伝える方法が少ない」(32・9%)にも多くの回答が集まった(図3)。 企業が生徒のことを理解する機会が少ないのと同時に、企業のことを生徒が知る機会も限定されており、入社前の段階では、お互いのことがよくわからないまま採用活動が行われている可能性が示されている。 近年、高卒就職者の就職後3年以内の早期離職率は微減傾向にあり、直近では39・5%(2017年卒、厚生労働省)となっている。早期離職は、社会人生活最初のつまずきとなるばかりか、後述のように、その後の非正規雇用の固定化、長期無業にもつながる可能性があることから、大きな社会問題でもある。 今回の調査ではこの早期離職について、そのタイミングを詳細に分析した(図1)。その結果、3年以内の離職者は40・0%であり、その4分の1以上にあたる10・7%が半年以内に離職する「超早期離職」の実態が明らかになった。4月入社の場合、正社員として就職した高校生の実に9人に1人が最初の職場を9月までに辞めているのだ。 半年以内というのはまだ試用期間中である可能性も高い。仕事の全体像を把握できたとは考えづらいような時期の、ごく初期のミスマッチが多数起こっている。 また、こうしたごく初期の離職が、その後の非正規雇用や無業期間の長9人に1人が最初の会社を半年以内に辞める、「超早期離職」の問題出典:当事者調査高卒就職者の初職離職率とそのタイミング図13年以内の離職なし60.0%半年以内の「超早期離職者」10.7%3年以内の早期離職者40.0%離職時期別のその後の就業状況図2就職状況現職の非正規雇用割合3年以上の非正規雇用期間があった割合3年以上の無業期間があった割合離職時期半年以内離職者35.6%31.7%8.0%3年以内離職者31.5%26.9%7.2%3年以内離職せず11.1%17.9%3.6%出典:当事者調査362021 FEB. Vol.436

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