キャリアガイダンスVol.436
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(図10)。会社が将来のキャリアを用意するのではなく、自らのキャリアを自分でつくることは今後ますます重要になると考えられるからだ。「自分のキャリアを自分でつくる」とは、キャリアのセルフマネジメント、好奇心、未来志向、問題解決に対する自己効力感から構成される概念だ(北村,2020)。 分析の結果、就職理由「特になし」は、キャリアを自分でつくることにマイナスの影響を与えていた。高校3年生での成績はプラスの影響が、また、やりがいや自己成長を重視した入社動機もプラスに影響している。高校の授業を通して「働くことに対するポジティブなイメージをもった」こと、就職活動の自己決定感(就職先・応募企業・業種・進め方についての合計)は自分のキャリアを自分でつくることにプラスの影響がみられた。高校在学中の経験が長期のキャリア形成に影響していることを示唆しているといえよう。分析結果「生き生き働くこと」に影響する要素⦆図9分析結果「自分のキャリアを自分でつくる」に影響する要素⦆図10生き生き働く自分のキャリアを自分でつくる自己実現重視入社動機特になし就職理由高校3年生の時の成績成績自己実現重視入社動機働くことに対してポジティブなイメージをもった高校授業就職活動(就職先・応募企業・業種・進め方)自己決定興味関心のある内容に対する学習時間が増えた高校授業自らのキャリア観(生き方)が明確になった高校授業働くことに対してポジティブなイメージをもった高校授業入社前後の「仕事内容」「人」のイメージギャップ就職活動の進め方・やり方自己決定【当事者からのコメント】(知りたい・教えてほしい)●もっと色んな職種について知りたかった。●誰も受けたことのない会社だったため、情報は求人情報と企業のホームページなど限られていた。働いている人の言葉があったらなと思った。●ハローワークなど個人で仕事探しをするのは禁止されており、学校に来た求人票からしか仕事探しが出来なかったので、もう少し就職先の選択肢がほしかった。●地元で名が通っている企業だけじゃなく、マイナーな会社や色々な職種を紹介してほしかった。●通っていた高校が工業高校で、求人がガテン系ばかりだったので幅広い職種の求人を見たかった。(見たい)●興味を持った企業に職場見学に行きたかった。実際にどんなものを作っているかなどの話や、会社で毎年恒例の行事など実際に働く際の情報もほしかった。●求人票でしか情報を得られなかったので、見学したかった。●就職試験を受ける会社にしか工場見学をさせてもらえなかったため、複数見学をさせてもらいたかった。●もっといろんな企業へインターンシップに行ける時間を確保してほしかった。先生の数も足りなくて1社しか行けなかった。(話したい)●就職活動の相談を担任の先生だけではなく、もっと就職や社会に詳しい人にもしたかった。相談できる人が少なかった。●会社での仕事内容はもっと詳しく聞きたかった。様々な商品を作っているメーカーだったのでそれぞれの仕事をしている人と話したかった。(困った・こうしてほしかった)●複数人が同じ職場を希望した時に、学校側で面接を受ける人を厳選していた。面接できるようにしてほしかった。●1人1社しか応募できず、成績の良い順から学校宛に来た求人先に応募できるシステムだった。就職指導教諭のお気に入りの生徒のみ、全体には表示していない企業の求人へ応募ができた。●就職を希望している人だけでまずは校内選考という制度があった。その校内選考制度をやめてほしかった。行きたい場所、受けたい場所があっても選考漏れすると受けられず、将来のビジョンが崩れてしまう。●進学校のため、進学しない生徒にはほぼ指導がなかった。もっと、担任から学校で就活の仕方など教えてほしかった。なにもしないまま卒業を迎えてしまったので、その後自分でハローワークに行き就職先を探すことになってしまった。就職活動のとき、高校にしてほしかったことは?フリーコメント2出典:当事者調査出典:当事者調査※因果関係を明らかにするため、図9、10は重回帰分析を行い、統計的に有意な結果を示している(-)13412345どうすれば高校生は「自分で選んで決めた」実感をもって働き始められるのか特別企画2「大事な決断は自分の信念に従って行う」「自分の将来については自分でかじを取る」「決める前には、いろいろな選択肢を検討するほうだ」「自分のキャリアを自分でつくる」の質問項目「自分自身の成長につながるチャンスを探している」「世の中の変化や自分を取り巻く環境に関心をもっている」「物事を粘り強くやり遂げることができる」「仕事は、私に活力を与えてくれる」「私には仕事に活かせる強みがあると思う」「仕事内容に満足している」「私の仕事は、私自身をより理解するのに役立っている」「生き生き働くこと」の質問項目「仕事の進め方などについて自己管理ができている」「上司、または職場の誰かが、私を個人として気にかけている」「今の仕事では、自分の強みが活かせていると思う」392021 FEB. Vol.436

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