1年間続いた神﨑氏の連載も、今回で最終回となりました。世界を捉え、未来を構想するツールや思考法を紹介します。国人労働者の需要も減少します。外国人労働者の減少は地元の共生感覚が失われる契機となり、外国人労働者が定着しにくくなるという様子を描きました。 こうしたシステムが想定できないと、外国人労働者の減少のみを対処しようとしがちです。しかし、例えば新型コロナに対応した経済政策を施すと、外国人労働者の増加につながることや、外国人労働者と地元住民との共生を促すことで地元経済の活性化につながるといった発想が生まれます。 このように考えることで、自分の知っている都合の良い事柄だけでものごとを見たり、単純化して事象を捉えることを回避するのです。 私の小論文指導では個人あるいはグループで因果ループ図を描き、問題が起こる要因を探っています。視野の狭さやものごとをシステムとして捉えることができない原因の多くは、調査や文献購読が不十分なことが要因ですので、そういった場合はさらなる調査を促します。 視野を広げるための助言をする際、高校生に考えてもらいたいことがあります。それは、要素(変数)を探す範囲を広げることです。自分が所属する共同体の範疇か、それを超えた「世界」を見つめているか。見えている範囲が大きいほど、システムを広範に捉えることができます。 そして、この手続きを経ると、問題や課題が関わる「世界」のなかでの葛藤と向き合うことにもなります。価値観や思想、生活環境が異なる人々の意志を探り、どうやってよりよい世界と未来をつくる 前回、目の前で起こる課題について、構成要素の相互関係全体像を捉える「システム思考」を紹介しました。しかし、システムの構成要素がどのように作用するのか表現することは難しいので、今回は要素の関係を直感的に説明できる「因果ループ図」(※1)を紹介します。 例えば「出生数が増えると、人口が増える」「人口が増えると、出生数が増える」ことを因果ループ図で表現すると、このようになります。 要素(変数)間を、因果関係を表す矢印で結ぶループの特性を理解できれば、問題を対処する方法を考えることができます。 もう少し複雑なものとして、新型コロナウイルス感染症と外国人労働者との関係を高校生が示したものを再現します。感染拡大に伴い、地元経済が衰退すると、外世界と未来に自己をどう位置づけるか出典: ※1ジョン・スターマン『システム思考』(東洋経済新報社) ※2アンソニー・ダン『スペキュラティヴ・デザイン』(ピー・エヌ・エヌ新社) ※3米盛裕二『アブダクション仮説と発見の論理』(勁草書房)出生数人口新型コロナ地元経済外国人労働者多文化共生共生感覚が失われると共生感覚が失われると外国人労働者も定着しづらく外国人労働者も定着しづらく地元経済が衰退すると地元経済が衰退すると外国人労働者の需要も減少外国人労働者の需要も減少外国人労働者が減少すると外国人労働者が減少すると地元の共生感覚も衰退地元の共生感覚も衰退(+)または(ー)の記号について(+)は、原因が増えたときに結果も増える、もしくは、原因が減るときに結果も減るさいに付します。(ー)は、原因が増えたときに結果が減る、もしくは、原因が減ったときに結果が増えるときに付します。単純に(+)が増える、(ー)が減るというのは誤りですので、注意してください。462021 FEB. Vol.436
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