キャリアガイダンスVol.436
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502021 FEB. Vol.436■ 総合的な探究の時間● 1年次「熱高ラボ」:大テーマ(お土産・温泉・歴史・国際)に関連した企業や施設での フィールドワーク● 2年次「熱海ラボ」:事業所ヒアリング、事業所訪問、課題解決策へのアドバイスなど■ 授業での地域連携例● 商業:「高校生ホテル」の企画、ツアープラン企画、商品開発● 福祉:福祉施設実習や特別支援学級交流授業など● 理科:ジオパークとの連携、フィールドワークによる防災提言● 家庭科:食育団体との連携による熱海食育カレンダー作成            など■ 特別活動での地域連携例● ATAMI2030会議参加、子ども食堂開催● 社会人講話■ 部活動での地域連携例● エイサー部、ボランティア部:地元施設訪問、イベントでの発表、手伝い、異校種交流● 運動部:地元祭りへの参加● 報道部:企業とコラボした広報誌作成熱海ラボで、ある新商品の試作品販売を行った生徒は、抜群のコミュニケーション能力を発揮してあっという間に商品を売り切り、企業の担当者から絶賛された。それが自分の可能性を信じる力になったようだ。 「事務職での就職を希望していた生徒でしたが、それ以降、幅広い職種を視野に入れるように。今後は新しいことにも挑戦していきたい、と前向きに語っています」(永井先生) 日常の授業のムードが変化していると感じる教員も多い。生徒がポジティブなイメージをもって取り組めるように心掛けています」(永井先生) 「チームでの探究活動では、一人ひとりが何かしら役割をもって活躍の機会が得られるようにし、出来栄えにかかわらず、やったことに対して『いいね』と認めることを大切にしています」(平沢先生) そうした地域と連携した学びのなかで、思いがけない活躍をする生徒も少なくない。 「授業中は生徒の発言を『待つ』ことを心掛けていますが、うまく言葉にできないながらも自分の考えを言葉にしようという雰囲気が、以前よりも強く感じられるようになりました」(平沢先生) 石田校長は、3年生が地域の大人と堂々とコミュニケーションする姿を見て、地域との関わりが生徒を大きく成長させることを実感するという。 「自己表現の場面が数多くあり、地域の方が褒めてくださる。その積み重ねによって、教室で目立たなかった生徒も少しずつ自信をつけているのではないでしょうか」(石田校長) 地域協働の取組の充実化の一方で、目指す資質・能力の到達度の評価開発にも取り組んでいる。19年度は、評価規準の設定に向けて3つのアプローチを行った。 まず、校内の意見を集約・共有しようと、教員研修を開催した。「本校の強み・弱みとは」「本校生徒のもつ特徴は」「地域で活躍する人材がもつであろう資質とは」「理想と現状のギャップを埋めるには」といったテーマでグループワークを実施。同校が掲げる3つの資質・能力のなかでも、「主体性」の重要性を全体で共有した。 次に、地元企業に「社内でも評価され地域貢献にも積極的な人の特質」をヒアリング。校内研修で出た意見と同じ方向性であることを確認した。 そして、実際に熱海市で活躍している人たちと、同校生徒との意識・行動の違いについての調査にも取り組んだ。地域活性化に関する文献を10冊以上読み込んでキーマンの思考や行動の特質を抽出し、その度合いを尋ねるアンケートを作成。市議会議員、市内町内会長、商工会議所職員など地域に貢献している人と、同校生徒に同じアンケートを行い、両者の結果を比較・分析した。「地元が好きだからといって必ずしも地元のために動けるわけではない」という分析結果から地域課題を自分ごと化する施策の重要性が明確になるなど、今後地域の大人に認められた経験が自分の可能性を信じる力に活躍中の大人のもつ資質・能力を分析し、評価開発に活かす図2 地域連携により充実化が進む多様な取組熱海ラボでは、各事業所のプレゼンを基にヒアリングを行い探究テーマの設定へ。フィールドワークでは地域の方の丁寧な説明に、生徒は興味深そうに耳を傾ける。商業科の授業で、生徒考案のツアープランのチラシを街中で配布。店頭での商品の宣伝や、新商品の試作など、体験的な活動も実施。市内の商工会議所と連携し、「働く」をテーマに社会人と語り合う「キャリアカフェ」を開催。家庭科で市内食育団体と連携して制作した「熱海 食育カレンダー」。

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