512021 FEB. Vol.436の取組の方向性が確認できたという。 こうしたアプローチを踏まえ、今年度、総合的な探究の時間、および商業・福祉の実習科目では、「探究力・主体性・協調性」の3つの資質・能力について試験的に作成したルーブリックに基づく、自己評価シートを導入(図3)。取組の前と後に生徒が自己評価を行うことで、取組による変容を見ていく。今後は、各教科の授業においても、資質・能力のルーブリック評価の導入を検討していく計画だ。 また、評価開発に取り組むなかで、単発の取組を増やすのではなく、地域課題を軸に教科の学びを有機的に結びつけ、カリキュラム全体で目指す資質・能力を育んでいく必要性が見えてきたという。 その第一歩として、すべての授業において課題解決的な視点による学びを取り入れることを目指し、今年度からシラバスに「自ら課題設定・解決をする場面」の欄を設置(図4)。各教科・科目で教材や発問の工夫が進められている。 そして、幅広い分野の視点や知識を活用して課題解決に取り組めるよう、教科横断的な学びへの挑戦も始まった。シラバスに「教科横断的な活動をする場面」の欄を設けたほか(図4)、各教科から「他の教科に『求める』こと」と「他の教科に『提供できる』こと」を吸い上げてマッチング。英語科と家庭科による、地域食材を使って考案したレシピを英語でプレゼンする授業や、理科と地歴科による、地形図を読みながら防災ハザードマップを作成する授業など、多彩な横断授業が生まれている。 次のステップに見据えるのは、22年度入学生からの新カリキュラムの設計だ。生徒がそれぞれの興味・関心のある分野を軸に学びを深めることができるよう、現在1・2学年の総合的な探究の時間で実施している地域課題探究を、3年間のプログラムに拡大し、各教科と総合的な探究の時間の学びを関連づけた、コース制よりも自由度の高いカリキュラムを構想している。教務主任の小見山秀彦先生はこう展望を語る。「各教科・科目で身につけた視点や知識を結集させ、総合的な探究の時間で地域課題解決に深く取り組むことで、生徒の資質・能力を効果的に育んでいきたいと考えています。そのような学びを推進していくには、我々教員は教科書の内容だけ教えるという発想から抜け出すことも必要。それぞれの個性を活かして、生徒に刺激を与えられる存在でありたいと思います」(小見山先生) 今後も、地域連携と教科横断的授業を柱に、生徒の資質・能力の育成に丁寧に取り組んでいく方針で、一歩ずつ前進を続けていくという。学校全体で授業改善と教科横断を推進総探を軸に教科間がつながる新しいカリキュラムを構想中人と関わる楽しさを学んだ中学時代、ただ自分ががんばればうまくいくという思いで、あまり人と関わらずに過ごしていました。でも、卓球部の最後の試合で良い結果を残せなかったとき、「一人でやれることには限界があるのかも?」と。そこで高校では、人ともっと積極的に関わろうとしてきました。チームで取り組む熱高ラボ・熱海ラボでは、みんなの意見を取り入れることを大切にし、まとめ役として動けたと思います。また、引き続き卓球部に入ったのですが、仲間とアドバイスし合いながら練習を重ねた結果、県大会にまで出場することができました。人と関わるとこんなに楽しく、良いことがある。熱海高校で学んだことのひとつです。自分の強みを発揮し、頼られる存在に 熱高ラボ・熱海ラボの探究活動、福祉コースの実習、エイサー部の介護施設や地域イベントでの演舞など地域で活動する機会が多く、幅広い方々とのコミュニケーションを学ぶことができました。熱海ラボで障がい者就労支援施設の課題に取り組んだときは、そうした経験を基に積極的に発言・行動することができ、友達から「渡辺君ならここどうする?」と頼られるように。気づいたら、チームの中心にいました。中学までは人と話すのが苦手だったので、違う人になったように感じます。卒業後は県内の農業協同組合で働く予定です。何か仕事が発生したとき「渡辺君に頼みたい」とすぐ名前が挙がるような存在になれるよう、がんばっていきたいと思います。3年生(進学コース)北原丈じょうだい大さん3年生(福祉コース)渡辺 心しんさんInterview※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 発行メディアのご紹介>> キャリアガイダンス(Vol.436)図3 総合的な探究の時間・商業科目の実習の自己評価表図4 2020年度からのシラバス総合的な探究の時間で使用する自己評価シート(右)と、商業科目の実習で使用する自己評価シート(上)。探究力・主体性・協調性について、現在どのぐらい身についているかを各自チェック。シラバスに「自ら課題設定・解決をする場面」と「教科横断的な活動をする場面」の記入欄を設置し、各科目の授業での導入を促進。
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