キャリアガイダンスVol.436
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2019年8月に本学園の理事長に着任するまで、私は長く実業界に身を置いていました。朝令暮改も厭わず即断即決が迫られることの多い企業と異なり、教育の世界は大きな時間軸で物事を判断する必要があることを実感しました。教育重視を謳う本学では、20年ほど前から、先生方が互いの授業を見学し、批評しあうなどの授業改善に取り組んでいることも感心しました。 私は、前職で採用や人材育成に携わっていたこともあり、教育界と実社会をどのようにつなぐかという問題意識を強くもっています。企業においては人がすべて。人材教育に手が回らず即戦力を求める会社も増えていますが、じっくり人を育てようとする企産業界と隔てることなく、社会の変化に対応しつつ、同じ方向を目指す必要があるのです。幸い、日本の製造業の中心地にあって、周辺には人を大切にする企業が数多くあります。そこで活躍する卒業生が気軽に遊びに来られる機会を増やしていきたい。先日開催した就活関連フォーラムには、コロナ禍にもかかわらず卒業生が駆けつけ、現場について後輩に語ってくれました。私や教職員が百万言を費やすより、先輩のひと言の方が響くでしょう。事情が許せば、今春から稼働する新校舎のお披露目を兼ね、ホームカミングデーのような集いが開催できればと考えています。 私が大事にしている言葉に、「問題意識」「危機意識」「当事者意識」があります。人から言われたことを鵜呑みにするのではなく、「なぜだろう」と自分に問うてほしいし、「このままではいけない」と感じることがあれば、「どうする、誰がやる?」ではなく自分がやる。このたび本学は「自分が変わる、未来を変える」というタグラインを掲げました。自らの未来を力強く変えていくというメッセージは、学生だけでなく、我々教職員も未来に向けて変わっていこうという決意表明でもあります。未来を変える当事者となるべく、学生と教職員が共に成長できる大学を目指します。【理事長プロフィール】むとう・たけし●九州大学経済学部経済工学科卒業後、大同特殊鋼株式会社入社。鋼製品事業部長、経理部長、特殊鋼製品本部事業総括部長、取締役、常務執行役員などを経て、2019年8月より現職。【大学プロフィール】1939年大同工業教育財団(現学校法人大同学園)設立、大同工業学校設置。62年大同工業短期大学設置。64年大同工業大学設置。2009年大同大学と改称。工学部(機械工学科、機械システム工学科、電気電子工学科、建築学科)、情報学部(情報システム学科、情報デザイン学科、総合情報学科)、教養部、大学院工学研究科、情報学研究科を擁する。「自分が変わる、未来を変える」未来を変える当事者になってほしい業は少なくありません。そうした企業と連携を深めたいと思っています。特に、ものづくりを中心とした製造業は、人づくりに軸足を置かなければ成り立ちません。「歩留まり」や「不良率」の改善などには、さまざまな知識や経験が求められ、蓄積されたノウハウを皆で共有するには信頼に基づく組織風土が必要だからです。また、一人のカリスマではなく、それぞれの場面に応じた現場のリーダーが求められます。 本学は、ものづくりを中心とした学部学科で構成された大学です。中部地方の産業界31社のバックアップによって設立された経緯をもち、「産業と社会の要請に応える人材の養成」を建学の精神としています。だからこそ教育界・̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一 撮影/臼井美喜夫学校法人大同学園(大同大学)理事長武藤 大532021 FEB. Vol.436

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