キャリアガイダンスVol.436
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(左から)門林良和先生(「よのなか」科担当・アクト部顧問)、大蔵香澄さん(高3・アクト部副部長)、仲村篤紀さん(高3・アクト部部長) 「県外出身の私が感じることは、人と人とのつながりが、ここ沖縄には強く存在するということです。子どもたちが社会とつながる機会に恵まれた沖縄には、次世代の沖縄、そして次世代の日本や世界のリーダーが育つ豊かな土壌が既にあるのです」 大阪出身の門林良和先生は、教室と世の中をつなぎたいという思いを抱いて教員になり、2008年、興南中学・高校に着任した。冒頭の一節は、『15歳へのバトン』(ボーダーインク/2013年)に門林先生が寄せた文章。同書は有志生徒と共に結成したクラブ「社会科部」で、県内外の著名人に取材した内容をまとめたものだ。 「一人の力で世界を変えられると思いますか?」「勉強って将来役立ちますか?」「創っていきたい理想の沖縄像を教えてください」「15歳のうちなーんちゅへのメッセージを」。2年間で42人へのインタビューを続けるなかで、成長した生徒たちの活動はやがてラジオ出演やビジネスコンテストへの挑戦へと活動の幅を広げていった。 創部当初4人だった部員は、80人を超えるまでになり、名称も「興南アクト部」に。現在の活動の柱は、県外からの修学旅行生への首里城ガイドだ。 取材時、部長を務めていたのは高校3年生の仲村篤紀さん、副部長は大蔵香澄さん。共に中学1年で入部し、生徒会や他の部活動とも兼部しながら6年間活動してきた。仲村さんは門林先生の社会科の授業が刺激的で「この人についていったら面白いことがありそう!」と入部を決意、中学1年生でガイドデビューをした。 ガイド(左ページ写真上)は、中学生から高校生まで2〜4人程度のグループで行い、先輩から実地で方法を学んでいく。「最初はガイドブックを読みながら伝えるのが精一杯でしたが、だんだんに自分なりのガイドができるようになりました」と大蔵さん。 県外の中高生に首里城の見所や歴史、沖縄の文化を伝え「すごい!」と感心され、「面白い!」と興味をもってもらった経験を通して生まれたのは、沖縄への誇りや愛着の自覚。また、初対面の人にも積極的に話しかけ、会話が生まれるように工夫を重ね、表現力やコミュニケーションの力も育まれた。「首里城がなければ今の自分はいない」「自分を成長させてくれた場所」と二人は口を揃える。 その首里城で火災が発生した。部の中心となって活動していた高校2年生の秋、10月31日のことだった。「早朝から携帯が鳴って、え?って」実感のないまま登校し、校舎から首里城方面を見ると煙が上がっていた。 2日後にはガイドをすることになっていた。正殿はやっと鎮火したところだ、中止するしかないか…と中心メンバーで話し合って出した結論は「私たちにとっては悲しいことが起こってしまったけれど、せっかく沖縄に来る子たちには楽しい思い出をつくってもらいたい。笑顔で迎えよう」。ガイドは、やる。ただし、自分たちで作成したスライドを映したスクリーンの前で。 校内でのバーチャルガイドをやり遂ガイドを通して生まれたのは自信と沖縄への誇り首里城焼失を乗り越えて新たなアイデアでガイド沖縄のシンボル、首里城で県外からの修学旅行生にガイド活動を行ってきた興南アクト部。2019年の火災による首里城正殿焼失、そして新型コロナウイルスによる修学旅行の中止と相次ぐ試練を乗り越えてきた部員たちに話を聞きました。県外中高生と交流する“外向き文化系”興南アクト部取材・文/江森真矢子興南中学校・高校(沖縄・私立)第26回1962年創立/普通科/生徒数:中学452人(男子223人・女子229人)、高校1045人(男子651人・女子394人)/進路状況(2020年3月卒業生)大学314人・短大5人・専修38人・就職5人542021 FEB. Vol.436

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