キャリアガイダンスVol.436
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「英語が好き」「英語が得意」というと「海外に行くときや英語の記事を読むのに役立つね」といった話になりがちです。でも英語を通して学んだことはもっと普遍的に、日常でも生かせるはず。そう確信する先生の実践をご紹介します。取材・文/松井大助撮影/二村 海 だから生徒には、もっと英語を「日常に生かせる」という感覚で学んでほしいと思っている。英語を学ぶことで「人とつながれるんだ」「世界のさまざまなことを知って自分の可能性を広げられるんだ」などとイメージしていけるように。 「学校で学んだことが、現実社会ときちんと結びつくようにしたいのです」 現実社会とつながる学びになるよう、堀尾先生は同僚の先生と協力して、さまざまな授業の実践に取り組んでいる。 例えば、1年生の英語の授業におけるディベート。その導入では、なぜ授業で討論をするのかを、生徒にも説明するという。 「正解のない問いに自分なりの解を出さないといけないとき、どの判断にはどういうメリットやデメリットがあるかを『自分で考える』。そのうえで『自分の意見を論理的に伝える』。そのための一つの方法をディベートで学びましょう」と。 授業の組立としては、まず最初の2時間で、討論テーマについて肯定・否定それぞれの側面をブレーンストーミングし、生徒が自分の考えを英語で順序立ててまとめる。そのうえで、3時間目以降は、肯定側と否定側に分かれて、生徒が1対1や、ペア、チームで意見をたたかわせていく。 滋賀県立米原高校のある湖北地方では、日常生活で海外の人と英語で話すような機会はまだ多くない。同校の堀尾美央先生は、そのなかで「生徒が海外との接点をもてるようにしたい」と考えている。 「グローバルな活動というと、私立の学校を想像しがちですが、地方の公立の学校にも世界のことに興味をもつ生徒はいます。誰にでも海外にふれる機会が与えられる教育現場であってほしいのです」 その方針は生徒からも歓迎されるものだった。同校には、普通科英語コースという、英語や国際社会への興味が強い生徒が希望して入れるクラスがあるのだ。 ただ、その英語コースの生徒を含めて、日本の高校生の英語を学ぶ姿勢にはやや違和感も抱いているという。昨今はコミュニケーション中心の英語学習が増えているが、そのやり取りが授業だけのパフォーマンスにとどまりやすいのだ。 「例えば英語の授業では『会話でわからないことや聞き取れないことがあったら質問する』というやり取りをします。では普段の日本語の会話でわからないことがあったとき、生徒が質問するかというと、あまりしていません。人とコミュニケーションを取るために学んだことが、日常生活とつながっていないんですよ」英語を使って学んだことが日常生活とつながるように生徒に対する想いディベートの授業で思考力や伝える力を育む授業の実践海外との文通が英語にのめりこむきっかけでした生徒を見取って授業をデザイン米原高校(滋賀・県立)大学卒業後、滋賀県の高校教員に。2校目の勤務先である米原高校は、自身の母校でもある。同校で、Skypeを活用した海外の学校の生徒との遠隔交流授業を開始、その取組が評価され、2018年度には「グローバル・ティーチャー賞」のトップ50に選出された。英語科堀尾美央先生今号の先生562021 FEB. Vol.436※撮影時のみマスクを外していただいています。

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