キャリアガイダンスVol.436
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■ 米原高校(滋賀・県立)左の写真はSkypeによる海外の学校との交流授業。右の写真は模擬国連の授業。こうした授業を行うと、生徒たちは各国の地理や歴史についても自然に興味をもつようになるという。左の写真は、同僚の須戸先生とALTのカイル先生との討論のお手本。右の写真は生徒同士の討論。一連のディベートの授業は、堀尾先生も入れたこの3人のチームで形作ってきた。生徒同士で討論するときのプリント。相手が述べたことは“事実”か“意見”かを区別し、“意見”に対して「それは違う」「いつもそうとは限らない」などと自分の考えに合った言い回しで反論するやり方を学んだ。普段の日本語でのやり取りにも生かせる考え方だ。 討論を通して、事実と意見を区別し、意見に反論するというコツも学んだ。 Skypeを活用した海外との遠隔交流授業も、堀尾先生が同校で始めた取組だ。 初挑戦は2015年のこと。英語コースの生徒は毎年夏や冬に合宿を行うのだが、その合宿中に、NPOの協力を得て、ケニアの学校の生徒とSkypeでビデオ通話したのだ。生徒が英語で説明して「なんでやねん」という言葉を教えるなど、想定していた以上に盛り上がったという。 堀尾先生はほかの国との交流も模索し、Microsoft Educator Communityと 討論テーマには、「生徒が普段から疑問に思っていること」をチョイス。一つは「米原高校は生徒のアルバイトを認めるべきだ」で、このテーマで堀尾先生が肯定・否定の例文を示し、ALTとの討論の実演もした。生徒にとってわかりやすい話題にすることで、英語の難易度を抑えると同時に、普段の日常生活でも身近な物事について考えるきっかけにしてほしいからだ。 二つめの題材は「米原高校は制服を廃止すべきだ」で、この是非について生徒が肯定や否定の立場から意見を交わした。 「制服がないと服装に気を取られ、うまく勉強に集中できない人も出てくる」 「小学校は制服がなかったけど、集中できないという話はなかったのでは?」いうコミュニティサイトを見つけ出す。そのサイトで自身の海外の教育関係者とのつながりを広げ、ベトナムやスペインなど、さまざまな国との交流を実現させた。2019年度の3年生は、教科書に「パーム油をめぐる自然破壊」の話が出てくるボルネオ島とも交流。パーム油づくりの是非について地元の生徒と意見交換をし、相手から聞いた実情についてさらに質問をして、教科書だけではわからなかった現地の思いにふれることができた。 現3年生は、模擬国連の授業にも挑戦しているところだ。生徒一人ひとりがさまざまな国の立場となり、水資源や移民問題などを話し合うという授業。英語の得意な生徒ほど、日本に資料の少ない国を担当し、おのおのがインターネットで英語の資料を探し、読み込み、その国の事情を踏まえて意見を出し合っていく。 そうして英語を使って世界にふれることで、生徒には何を学んでほしいのか。 教師になりたての頃の堀尾先生は、「海外の文化を知ってほしい」「世界中の困っている人のことを伝えたい」と思っていたそうだが、今はその思いが集約されてこんなふうに考えているという。 「日本と海外の違いにふれたとき、相手を『異質』と思わずに『違うことは当たり前』と捉え、その違いを受け入れたり楽しんだりする姿勢を身につけてほしいな、と。そうした寛容さや柔軟性も、英語の授業で養っていきたいと思っています」英語で相互の違いを知って寛容さや柔軟性を養う“清純敦厚”を校訓に掲げる。「敦厚」とは「真心があって人情深い」こと。普通科と理数科があり、普通科はさらに2つのコースに分かれている。「普通科普通類型」は、進学から就職まで自分の進路に応じた教科・科目を学んでいくコース。「普通科英語コース」は、英語や国際社会に興味をもつ生徒がコミュニケーション重視で英語力を伸ばしていくコースだ。「理数科」では、自然科学に興味のある生徒が早くから理数の専門分野を学んでいく。普通科・理数科/1963年創立生徒数(2020年度)707人(男子379人・女子328人)進路状況(2019年度)大学204人・短大2人・専門学校/各種学校11人就職1人・その他18人〒521-0092 滋賀県米原市西円寺1200番地 0749-52-1601 http://www.maibara-h.shiga-ec.ed.jp572021 FEB. Vol.436

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