コロナ禍で特に実感したことが二つあります。一つは、主体的な学びの大切さです。これまでの対面授業においては、流れに任せて何となく学びを進める学生がいたかもしれません。それが、非対面での授業においては、主体的に学ぶ姿勢のあるなしが決定的な学びの質の差となることがはっきりしました。いかにして主体性を芽生えさせ、伸ばしていくかが問われるなか、私が注目しているのが「総合的な探究の時間」です。高校段階で、大学における研究の前倒しが行われるようなもので、本学もお手伝いできることがあるはず。そう考え、社会連携センターを窓口として、高校生が主体的に探究を深められるプログラムの提供に力教職員に支えられながら切磋琢磨していくことで人間的な成長は促されます。これまで大学という場が当たり前に有してきた、こうしたかけがえのない機能の価値こそ、コロナ禍がもたらした二つ目の実感です。非対面で知識を伝達することはできても、人間性まで育めるかは疑問です。それこそSociety 5.0といわれる社会になったとき、AIでは代替できない部分でしょう。そう考えると、人間のおごりを戒め、人との調和を説く「敬神愛人」という本学の建学の精神のもつ意味は極めて大きいと感じます。本学は、学生数6000人強という中規模の大学であり、名古屋移転以前から、教職員の学生一人ひとりに対する目配りには定評がありました。ほんの少し背中を押し、自信を芽生えさせることで、入学当初は頼りなく見えていた学生が見違えるように成長していく姿も数多く見てきました。 2018年には国際教育と社会連携を担うGlobal Linksと呼ぶ先進的な複合施設が完成し、在学生、留学生だけではなく、地域の方々や卒業生が集える、社会に開かれたキャンパスを体現しています。近年、志願者数を伸ばしているのも、人間的なつながりを大切にし、成長を促す大学として認知されてのことだとしたら嬉しいです。【学長プロフィール】あかそ・なおゆき●1959年生まれ。同志社大学大学院文学研究科英文学専攻博士課程前期修了。ウィスコンシン州立大学院M.A.。89年名古屋学院大学外国語学部専任講師に就任。99年同外国語学部教授。外国語学部長、大学院外国語学研究科長、学生部長を歴任し、2020年4月より現職。専門は英語学。【大学プロフィール】1887年名古屋英和学校創立。1964年名古屋学院大学開学。経済学部(経済学科)、現代社会学部(現代社会学科)、商学部(商学科、経営情報学科)、法学部(法学科)、外国語学部(英米語学科)、国際文化学部(国際文化学科、国際協力学科※)、リハビリテーション学部(理学療法学科)、スポーツ健康学部(スポーツ健康学科、こどもスポーツ教育学科)の8学部11学科、大学院2研究科を擁する。※国際協力学科は2020年4月募集停止。22年4月より、国際文化学科に「グローバル文化」「国際日本学」「国際協力・共生」の3専攻を設定予定。コロナ禍で実感した主体的に学ぶ姿勢と人間的なつながりの大切さ。高校や地域と共に育てていきたいを入れています。出張講義などを通じて、「大学ではこうした研究をしたい」といった学問に対する関心や、学部学科に対する理解が深まることを期待しています。それこそ私たちが考える高大連携です。対面での講義が難しければオンラインでの提供も可能。むしろ物理的な制約がない分、可能性が広がることは、今回試行錯誤するなかで気づかされました。その点、現在、名古屋キャンパス、瀬戸キャンパスに続く第3のキャンパスとしてデジタルキャンパスを構想中ですが、両キャンパスを有機的につなぐだけではなく、今後、不測の事態が生じた際も大いに活用されるでしょう。 とはいえ、多様な学生がリアルに集い、̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一 撮影/臼井美喜夫名古屋学院大学学長赤楚治之612021 FEB. Vol.436
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