4Vol.436 別冊特集 「そのため、企業側はあらかじめ知りたい要素を質問事項に落とし込んでマニュアル化した構造化面接(※4)を導入することが増えてきました。それに基づいて最初に、答えに必要な条件をすべて説明する『リッチな質問』を投げかける。応募者側は、質問と条件を踏まえて、自分が言いたいことを明確化・言語化してプレゼンテーションする力が重要になります」 この点で、テレワークの拡大による働き方の変化と、オンライン面接の拡大は一つの文脈でとらえられる。富士通のように、入社後のテレワークを見据えて採用活動においてはコロナ後もオンライン面接を続けるという企業がある所以でもある。そして、自分で話を構成し、行動や経験の意味をストーリー化して伝えるプレゼン能力は、付け焼刃では身につかない。高校、大学での学びを通して、自分にとっての意味を深く考え、それをほかの人に言語化して伝えるという経験を繰り返し磨いていくことが、これまで以上に大切になる。 メンバーシップ型雇用を前提とした対面型面接が主流だった時代には、企業は主に応募者のポテンシャルと人柄を見ていた。ポテンシャルは大学の偏差値で大まかには判断できたし、人柄は対面の面接である程度は把握することができた。そのため、特に文系では「大学で何を学んできたか」は主要なトピックではなかった。企業は、むしろ、ガクチカと言われる、学生時代に最も力を入れたサークル活動やアルバイト経験から人物像を測ろうとしていた。 しかし、ジョブ型雇用では新卒者に対しても職種別採用を行うケースが今後は増えてくると予想される。職種別採用まではいかなくとも、どのような課題に取り組むための、どのような能力やスキルをもった人材を採用するのか、より明確に定義することが一般的になってくる。例えば、グローバルな事業展開を担う人材が必要だから、英語と異文化コミュニケーションの力に長けた人材を採用するというように。そうなると、「大学で何を学んできたか」が一転して重要な意味をもつようになる。 「コロナ禍で、学生がサークル活動やアルバイトに以前のように取り組めなくなったという事情もあって、今、大学で履修した科目を基に面接を行う履修履歴面接(※5)を導入する企業が増えてきつつあります。就社から就職へ、学校歴から学習歴への大きな転換が起きようとしています」 つまり、今後は、企業における仕事、そのために必要な力を見据えて、「どのような力を身につけたいか」という観点から進学する大学や学部・学科を選ぶ必要性が高まるということだ。しかし、ここでひとつ懸念すべき問題がある。 「そうなると、先生や保護者は『今この職種のニーズが高いから』という理由で、良かれと思って生徒に薦めることもあるでしょう。しかし、それでは本末転倒。適性や本人の好奇心がない分野では、主体的・能動的な学習につながらず、結果として、企業の期待に応えられるような専門性は身につかないからです」 では、そのリスクを回避するにはどうしたらいいのだろうか。 「高校時代に、将来の自分のキャリアを見定め、それに合致する進路を選択するのが最も理想的です。しかし、誰もがそうできるわけではありません。その場合、大学で自分のやりたいことを見つけることになるので、それが可能な、豊富な選択肢が用意されている大学・学部・学科を選ぶ方法もあります」 それは、例えば、リベラルアーツ型の学部かもしれないし、学部に関わらず留学やインターンシップ等に挑戦できる大学であるかもしれない。しかし、誰にも当てはまる正解はない。重要なのは本人が主体的に選び、能動的に学び、自分の目的に沿って経験を積み重ねていくことであり、それができる環境があることだ。あらかじめゴールが決まっているレールにいち早く乗ることが重要なのではないと曽和氏は指摘する。 今後、前段で説明したように就活状況は厳しくなる可能性もある。コロナ禍のような想定外の事態でさらに局面が変わったり、今、就職に有利と言われているスキルへのニーズが変わることも十分にあり得るだろう。 同じことは、まさに今、入試改革やコロナ禍による受験影響という困難に直面している高校生にも言える。だからこそ大学では、将来の仕事でも発揮できる専門性や基礎力を身につけるとともに、そういった変化にもタフに対応し、不測の事態や苦難を乗り越える力、そして変化のなかでも主体的に自分の道を選択し、行動する力も養ってほしい。 アフターコロナ時代を生き抜くためには、その点も踏まえた主体的な選択こそが最も重要になるだろう。オンライン面接の拡大で求められる力が変わる図3対面型面接● キャッチボール型のフリートークが主流 ● 聞かれたことに短く答えることが求められる ● マニュアル化された構造化面接が主流 ● 最初の質問を受けて、必要なことをすべて説明することが求められる オンライン面接瞬発力が重視されるプレゼンテーション力が求められる
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