遭遇したそうです。 良質な問いは、問われた側の感情や思考を刺激し、その人なりの考えや意見を生じさせます。そして、それらが場に共有されることで、集団による主体的なコミュニケーションが誘発され、その過程でお互いに対する理解が生まれます。その結果、新たな気づきや発見に発展することもあるでしょうし、さらなる問いが生まれることもあるはずです。後ほど解説しますが、問いは「創造的対話」のトリガーになりえる。まず最初に、そのことを強調しておきたいと思います。 ワークショップデザインやファシリテーションの方法論について研究している私のもとには、「社員の主体性がなくて困っている」「エンジニアの頭が固く 動物園で実施された、ある子ども向けワークショップでのこと。集中力が切れかけていた子どもたちに、『問いのデザイン』の共著者である塩瀬隆之さん(京都大学総合博物館 准教授)が、こう「問い」を投げかけました。「象の鼻くそって、どこに溜まると思う?」 この問いをきっかけに、子どもたちの間で「対話」が一気に広がりました。「先の方でないと、ほじれないのでは?」「あの足では鼻の穴に指が入らないでしょう」「真ん中くらいに溜まって、水と一緒に吸ったり吹き出したりするのかな」といった仮説のほか、鼻くそ以外に気になることも次々生まれていきます。帰りの電車内でも、象の鼻くその話を続けている親子に塩瀬さんは問いが誘発する「創造的対話」創造性を引き出すワークショップデザインやファシリテーションの方法論について研究し、今回の誌上研修も監修していただいた株式会社MIMIGURIの安斎勇樹さんに改めて「創造的対話」と、それを促す「問い」について伺いました。良質な問いによって、生み出される「創造的対話」認識と関係性の固定化が創造的な発想や対話を阻害する182021 MAY Vol.437
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