キャリアガイダンスVol.437
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 文武両道を意味する「尚文昌武」をはじめ、勉強・行事・部活動の「少なくとも三兎を追え」、「無理難題に挑戦」など、硬派な理念を掲げる浦和高校。グローバルな社会における真のリーダーの育成を〝本気〞で目指している。 真のリーダーたるには、単に成績が良いだけではいけない。リーダーシップやコミュニケーション力、物事の真理を追究する深い洞察力も必要だ。そこで同校では、文部科学省が新しい学習指導要領に明記するかなり前から、「主体的・対話的で深い学び」を追求してきた。総合的な探究の時間のほか、すべての教科で、生徒の主体的な学びに取り組み、積極的に対話を取り入れている。 同校で行う対話の取組について、大山貞雄教頭ならびに、数学、英語、公民の先生がたにお話を聞いた。 齋藤教雄先生が行う数学の授業では、生徒に数題の問題を予習させ、授業では各グループに分かれ、グループの代表が、黒板に解法を書いて解説を行う。予習の課題を出す際には、生徒が考えを深めるための仕掛けとして「予習の着眼点」プリントを配付する。そこには、問題の図やグラフをどう見るか、過去のどの定理を使えるかなど、さまざまな角度から解き方の手がかりが書かれている。生徒はそのプリントを見て自問自答し、考えを深めながら解法を求めていく。「答えは一つでも解き方は複数ある。知っている公式をあてはめて解けばいい、ではなく、答えから逆算して、多面的に解き方を考えられるようになってほしい」というのが狙い。 授業中は、代表生徒の解説に対し、ほかの生徒は「なぜそう解くのか」「自分は別の方法で解いた」「ほかの方法でも解けるのでは?」など質問や発言をし、対話をしながら思考を深めていく。先生は、「どこでつまずいた?」「この考えがなぜだめか、説明できる?」「同じ疑問をもった人は?」など要所要所で問いを投げかけていく。 なぜこのような授業をスタートしたのか。「本校にくる生徒は、公式を覚え、大量のドリル演習をこなし、試験で同じパターンの問題が出れば解けるという成功体験を繰り返してきました。しかし、公式を知っているだけでは真の力にはなりません」 数年前は、授業中に先生が発問し、3分間協議させ、その後、できた生徒を指名して考えを発表させていたが、それではほかの生徒は「誰かできる人が答えてくれる」と思い、自分ごとにならない。そこで、着眼点に対して生徒同士の「学び合い」で解決したり、生徒を主体にし、グループごとに発表して議論し合ったりする今の形にした。 対話型の授業を行うことによって何が変わったのか。「先生が一方的に教える授業は、生徒が50分間ずっと集中できているわけではなく、ぼんやり考え知・徳・体を備えた真のリーダーを育成する予習した課題についてグループで対話し深く理解する問いを促す仕掛けが生徒の思考を駆動させる教え合い・学び合いの授業浦和高校 (埼玉・県立)取材・文/石井栄子〝広がる対話〞〝深まる対話〞高校実践事例授業県立浦和高校の「対話」の特徴~問いと多様な解法の視点から対話を深め、新たな問いを見出す~聴く力新たな問い対話別解納得解問い視点※先生・生徒の所属・学年などは取材当時のものになりますアクティブ・ラーニング、主体的・対話的で深い学びの広がりに合わせ、学校でのペアワークやグループワークも日常的なものになってきました。ここでは、そこからさらに踏み込んだ「広がり」「深まり」のある4校の対話事例をご紹介します。242021 MAY Vol.437

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