キャリアガイダンスVol.437
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事などをして、最後に板書をメモして終わることも。しかし、生徒主体で話し合い考えを深める授業なら、50分間フルに頭を使わなければなりません。発表し、対話をすることで、そういう考え方もあるのかと気づいたり、自分の弱点に気づくこともある。それが次の学びのモチベーションになる」 対話の時間は、主導権は生徒にあり、先生は見守るだけ。しかし、事前準備には時間をかける。「生徒の対話が生まれやすい問いをどう作るかが、一番頭を悩ませるところですね」 英語では、長文とそれに対する設問がプリントされた予習用ワークシートを配付。授業では予習した内容について、なぜそう思うかグループで対話を行う。「予習では、なるべく意見が分かれる設問を出します。英語力の差はありますが、教え合い学び合うことで、英語が苦手な生徒は理解が深まり、得意な生徒も教えることによって知識が確かなものになります。また、自分の足りないところに気づいたり、自分とは異なる考え方を知ることが生徒の学びにつながっている」と、英語科の塩原 壮先生。 1つの課題に3時間かけるとしたら、そのうち1時間は対話の時間にあてる。対話を取り入れることで授業の進度が落ちるのではと思うが、「グループで発言しなければならないので、生徒は真剣に予習せざるを得ません。長文もしっかり読み込んでくるので、教員が冒頭から順番に解説するよりも授業はむしろ速く進みます。ただ、知識として教えなければならない内容もあるので、時間配分は常に考えますね」 公民の髙橋律夫先生の授業では、授業にディベートを取り入れているが、対話的な効果も生まれている。 「自分の意見と違うからと相手を拒絶するのではなく、相手の主張を聞いて受け止めることができるようになっています。自分と意見は違うけれど、根拠がしっかりしている、論理に破綻がないなど、客観的に、相手の主張を評価できる力もついています。物事を多面的に見る柔軟な思考力が育っていると感じます」 対話型の授業は、先生から正解を聞くのではなく、まずは自分たちでなぜそうなるかを話し合う。その過程で人の意見が聞け、自分の弱点にも気づける。結果的に、一人で学ぶよりも多くのことを得られる。そして何より、みんなと学ぶことが楽しい。 実際、生徒たちからよく聞いたのは「話し合うことで理解が深まった」「話し合いの時間の方が断然面白い」という声だ。先生方も、「対話の時間は、生徒の食いつきがいい」と口を揃える。そのような授業ができるのは、男子校ならではの団結力や、もともと学び合い教え合いの風土があることに加え「先生方の対話に対する意識や授業での工夫も大きい」と大山教頭。「対話力は、リーダーの資質を育てるためにも不可欠であり、思考力や表現力を問う、新しい大学入試にも合致している。今後も進めていきたい」と意欲を燃やす。 対話型の授業を成立させるためには先生にも負担はかかる。しかし、それを補って余りある効果があるようだ。積極的な対話が学びを深め表現力、リーダーシップも育成1895年開校/男子校/全日制・定時制/普通科/全校生徒1084人/本年度、東大46名、一橋19名、東工大14名、東北大37名ほか、国公立・難関私大に多くの合格者を出す名門校。右から、大山貞雄教頭(4月から、国立研究開発法人科学技術振興機構)、齋藤教雄先生(数学)、塩原 壮先生(英語)、髙橋律夫先生(公民)(上)グループの代表が解法を解説する。(下)グループで疑問点や別解などについて話し合い理解を深める。学校データ先生が一方的に教える授業よりも、今のように、みんなで話し合う授業の方が断然いいです。自分ひとりで考えていては気づけない論理の矛盾を友達から指摘されたり、「こういう考え方もある」と言われて驚かされたり、より考えが深まります。また、いろいろな人の意見を聞き、物事を多面的に考えられるようになりました。私は直感的に問題を解くタイプなので、改めて「なぜそうなるの?」と聞かれて答えることで、考えを言葉にする訓練にもなりました。(2年生・張ちょう 恒こうき毅さん)中学校では、公式を覚えてなんとなく問題を解いていました。でも高校に入ると、なぜそうなるか意味を理解していないと解けない問題が出てきて、自分は本質を理解していなかったと気づきました。高1のときは苦しみましたが、授業中の対話を通して定義さえわかっていれば、飛躍的に速く簡単に解けることを教えられました。定義から定理を求めて、その定理から自分で公式を導き出して書くということを対話のなかで繰り返し、だんだん数学がわかるようになっていきました。(2年生・小こそね曾根 歩あゆむさん)物事を多面的に見られるようになった公式に頼るのではなく本質を理解するように生徒インタビュー対立を乗り越え、新たな価値を創造する「対話」“広がる対話”“深まる対話” 高校実践事例252021 MAY Vol.437

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