キャリアガイダンスVol.437
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422021 MAY Vol.437先生: 前回の進路希望調査と、進路の希望がずいぶん変わったみたいだけど?生徒: はい。父が司法書士事務所やっていて、跡を継ぐには法学部じゃないとダメだって。先生: それは、キミもやりたいことなのかな?生徒: ん~でも、長男だし…。先生: なんだ、あんまり納得しきれてないみたいじゃないか。生徒: …。先生: とりあえず親のことは気にしないで、自分の考えを言ってごらん。生徒: 就職試験の面接、全然受かんないんだけど。もう、受かる気がしない。先生: 会社の人から、面接の時や待合室での態度が気になったという連絡があったけど。生徒: え~。普通にしてたけどなあ(足を開いてふんぞり返って不満そうに座っている)。先生: あのさあ。そういう態度が問題なんだと思うぞ。生徒: …(不貞腐れている)。先生: そろそろ進路のこと、決めないといけない時期になってきたけど。生徒: はい…。先生: 大学進学はする予定なんだよね。生徒: はあ、まあ。周囲もみんな大学行くって言うから、そうかなって。先生: だけど、目標が定まらないと受験勉強もできなくないか?生徒: まあ、あんまりこれがやりたいとかないし、適当に入れるところで。先生: そんなんじゃ、どこも受からないぞ。生徒: …。ケース1ケース2ケース3進路選択において、親の言いなりでやりたいことが言えない生徒就職試験の面接で態度が悪く落とされてしまう生徒進路相談に来ても、何をしたいのかほとんど口にしない生徒対立を煽るのではなく、相互尊重の主張の大切さを伝える アサーションの基本でもある「相互尊重」の重要性から考えると、生徒に一方的な主張を迫っても、親との対立を深めることになりかねません。このような場合、生徒は「親の言うことを素直に聞くのが大事」「自分のやりたいことだけを言うのは、単なるわがまま」など、小さいころから自分の意見を口にしない習慣が身についていることが少なくありません。主張=反抗ではないこと、親の願いを尊重しながらも、自分の将来をしっかり考えてみたいという気持ちを大事にすること、それが基本的な人権として大切なことなど、生徒の認知への介入もしながら、自分の考えを口にできるように関わることが大切です。非言語コミュニケーションのコントロールを一緒に考えてみる面談の場面で教師が困惑していることを、DESC法で伝える 態度が悪い生徒の場合、面接の場で評価を受けるということに防衛的になり、ますます悪くなることも。まずは、面接の場は、良い部分を見ようとしてくれているのだという理解を促すこと。さらに、非言語も大事なコミュニケーションになると教え、何がダメだったかを一緒に考えてみようという働きかけが大事です。その上で、ちょっとしたコツ、足をあまり広げて座るよりも膝の開きは30センチ程度で拳を軽く握って腿に乗せて背筋を伸ばしたほうが姿勢よく見えるとか、ゆっくり丁寧に話すなど、非言語コミュニケーションスキル向上の練習などを積む場を作ると良いでしょう。 まずは、この面談で先生が困惑していることを、アサーティブに生徒に伝えることが大切です。そのためには、DESC法を活用して、今困惑している面談の場面を切り取り、整理して伝えましょう。D(描写):今のこの面談の中であなたの話について、E(説明):私はあなたが何を主張したいのかよくわからなくて困惑しています、S(提案):少し表現を変えたり、より具体的に表現したりしてもらいたいのですがどうでしょう、C(選択):また、資料など持っていたら見せてほしいです、などのように。多少、説明的で長くなりますが、その分冷静に問題や課題を明確化していくことが可能です。

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