キャリアガイダンスVol.437
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532021 MAY Vol.437※先生・生徒の所属・学年などは取材時のものになりますと出会うことが、最も重要な地域と関わる意義ではないかと考えるようになりました」(永田先生) PBLでの連携先の拡大を図るとともに、コロナ禍で訪問が困難となった際はオンラインインタビューを設定するなど、地域の多様な大人と出会う場の創出に力を入れている。 「自分の仕事に誇りをもって一生懸命取り組む地域の皆さんに出会い、話をすることで心を動かされる生徒はたくさんいます。そういう機会をいかに設定するかが、教員の仕事ではないかと思います」(松田充弘先生) また、生徒のFWを機に生まれた事業所・個人との関係性を活かして、節目に開催する報告会にもアドバイザーとして招いている。そこで生徒は厳しい意見をもらうことも多い。例えば、福井の観光の振興をテーマに取り組んだチームは、SNSの活用を検討したが、中間報告会でアドバイザーに「新鮮味ゼロ」と厳しい指摘を受け、必死になって練り直した。 「地域の方にダメ出しをしてもらうことで、課題の本質に気づき、やり直そうという意欲につながる。失敗を繰り返し、スパイラルのように成長していってほしい」(澤田則義先生) PBLのプログラムは2年間で終わるが、最近では、3年生になって自分の進路を本格的に考え始めたとき、「PBLで関わった地域の方にもっと話が聞きたい」と個人的に行動を起こす生徒もいる。また、市や地域の団体が主催するプログラムに手を挙げて参加するなど、活動の幅を広げる生徒も増えてきた。「チャレンジしたいが勇気の出ない生徒の背中を押すことも教員の役割」と言う髙嶋先生が、外部イベントを紹介した生徒は、1年間継続して熱心に参加し、「やりたいことがいっぱいできた」と将来への希望を膨らませている。 「子どもたちはアレンジするのが得意。一度PBLのプロセスを経験しておくことで、高校時代に飛び出すタイミングが得られなかった生徒は、卒業後にやってみたいと思えることができたとき、そのための一歩が踏み出せれば、それでいい」(永田先生) 同校が最も重視する「自己肯定感」の向上にも、手応えを感じる教員は多い。 「社会課題を自分ごととして取り組み、最後には活動を振り返り論文として言語化することで、自分がやってきたこと・学んだことがくっきりし、誇りになっていると思う。それは次に何かにチャレンジするときのエネルギーになるのではないでしょうか」(永田先生) 今後、さらに生徒を成長させるPBLへの進化に向けて、「他校の生徒との交流も入れていきたい」(松田先生)など、新しいアイデアも出ている。こうした改善に加えて、教員が〝生徒の力を信じる〞ことも欠かせないという。 「教員の『本校の生徒には無理』という先入観は、思い切った取組を阻む壁になる。しかし、生徒は機会さえあればできるのだと、これまでのPBLでわかってきました。まず信じて任せてみる。失敗しながらも諦めずに取り組む生徒の姿を見て、先生方のムードも変わるはず。そうして生徒が成長できる環境を整えていきたいと思います」(永田先生) 同校が掲げる7つの力の育成に向けて、PBLだけでなく、授業を含めた学校教育全体で取り組んでいこうという気運も高まっている。 「授業や学校行事、部活動など何でもいいので、生徒が自分なりの挑戦をし、成功も失敗も経験する。そこで自分が何をしてきたか、どう成長したかを誰かに語りたくなる。そんな学びの機会を、学校全体で提供していきたいですね」(永田先生)やり遂げた経験が次の一歩を踏み出す力に授業を含む学校全体で目指す力を育成していく今も、将来も、やりたいことがいっぱいPBLを通じて、「理想と現実は違う」という難しさと、探究する楽しさを知りました。だから、市が高校生対象に定期開催しているワークショップがあると聞いたとき、面白そう!と直感し参加しました。そこで魅力的な大人の方とたくさん出会い、「これもしたい」「あれもしたい」「この人みたいになってみたい」…と、今やりたいことがいっぱいです。将来のやりたいこともいっぱいあってまだ決まっていませんが、自分がいろんな人に助けられてきたので、今度は私が誰かの力になることをしていけたらと思います。(2年生・塩しおたに谷倫りんか加さん/写真左)より良いアイデアには、自分の意見も必要中学生までは積極的に意見を言うタイプではありませんでした。反論されると、自分がダメな人だと否定されたように感じていたからです。でも、高校で、地域の方や他校の生徒などと意見を交わす機会が多くあり、「お互いの考えを共有することでより良いアイデアを目指していけばいい。自分の意見もそのために必要なピースの一つなんだ」と考えるようになりました。卒業後は大学に進学し、地域課題解決について学ぶ予定です。時々、羽水高校のPBLにも顔を出して、本気で議論する楽しさを伝えたり、一歩踏み出せない後輩の背中を押したりといった活動をしていきたいと思います。(3年生・片岡 礼れおな央菜さん/写真右)Interview「地域に提案!」の課題設定報告会(ポスターセッション)の様子。生徒のプレゼン資料より。地域からの指摘を機にさらに検討を深めた。

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