「人間力と品位を有する専門職業人の育成」を理念に掲げる本校では、これまで各分野の「プロ」を育てきました。特に、IT分野であればLinux、建築分野であれば建築CG、サウンド分野なら立体音響という具合に、ある程度、実装分野を絞りながら、「自分たちが向かうのはここ。それに関しては一番になる」という信念の下、突き抜けた教育を行ってきました。 一方で今、「領域を超えたデザイン」も求められています。社会が複雑化するなか、例えば、単にゲームが好きだというだけで売れるゲームは作れません。一見、無関係と思われる分野の知識や発想が活かされることだってあるのでました。けれど前者にも技術教育が必要だし、後者にもセンスや感性が求められる時代です。 今後、社会の変化はますます加速していくでしょう。AIの進化によってSFの世界が足元まで来ています。もはや未来社会を正確に予測できる教員などいません。であるならば、学生と教員が一緒になって変革に果敢に挑んでいくという気概や、「それってなぜ?」とか、「こんなことができたら面白いな」といった好奇心こそ重要になると思います。それこそ卒業後も枯れないチカラのひとつ。「今の技術はすぐ陳腐化する」とか「AIに職を奪われる」と不安にかられるのではなく、変化を楽しみ、明るい面持ちで「自分たちの未来は自分たちで切り拓くのだ」と歩みを進めていけるかどうか。このたび、『AI基礎原理とその仕組み』というオリジナル教材を編纂したのも、いわば私自身の好奇心の発露であり、変革に挑むことの表れです。世にAIについて書かれた書物は多いけれど、なぜ自ら学習できるのかという原理や仕組みについて学生にわかりやすく書かれたものは少ない。ならば自分でやるしかないという思いで研究成果をまとめ、今春書籍化したものです。そんな姿勢も学生に示していきたいと思います。【理事長プロフィール】ふくおか・とみお●1958年神戸電子学園(65年神戸電子専門学校に改称)を創立。71年にコンピュータ技術教科書『電子計算機-総合設計と基本プログラミング』を出版。2005年神戸情報大学院大学(情報技術研究科)を開学。21年3月『AI基礎原理とその仕組み』を出版。【専門学校プロフィール】ITエキスパート学科、ITスペシャリスト学科、AIシステム開発学科、情報処理学科、情報工学科、情報ビジネス学科、ゲーム開発研究学科、エンターテインメントソフト学科、ゲームソフト学科、3DCGアニメーション学科、デジタルアニメ学科、声優タレント学科、サウンドクリエイト学科、サウンドテクニック学科、グラフィックデザイン学科、インダストリアルデザイン学科、建築インテリアデザイン学科、総合研究科に加え、留学生向け国際コミュニケーション学科を設置。突き抜けた専門教育と領域を超えたデザイン。好奇心をもって社会変化に挑めす。そんな時代に求められる技術者の職能とは何か。そう校内で話し合うなかで浮かんできたのが、共に学び、共に創る「共創」という概念です。領域を超え、多様な価値観とぶつかり、触発されることで生じた新しいアイデアを、それぞれの専門に活かしていく。その一環として、学科を超えて学生が集い、グループワークなどを通して課題解決の方法を探る全学科横断型の授業も展開してきました。 根底には「クリエイティブ・エンジニア」の養成という新たな教育の方向性があります。これまで私たちは、例えばCGやグラフィックデザイナーを「クリエイター」、プログラマーやSEを「エンジニア」と区別してきたところがあり̶変革に挑む̶まとめ/堀水潤一 撮影/山田紗基子学校法人コンピュータ総合学園(神戸電子専門学校、神戸情報大学院大学)理事長福岡富雄592021 MAY Vol.437
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