一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事熊平美香くまひら・みか●一般財団法人クマヒラセキュリティ財団代表理事。昭和女子大学キャリアカレッジ学院長。ハーバード大学経営大学院でMBA取得後、熊平製作所などを経て独立。2009年より日本教育大学院大学で教員養成に取り組む傍ら、未来教育会議を立ち上げ、教育ビジョンの形成に尽力する。文部科学省第11期中央教育審議会委員、教育再生実行会議高等教育ワーキンググループ委員、経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会委員などを務め、2018年には経済産業省の社会人基礎力に「リフレクション」を提案し、採択される。※1 VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字からなる造語。社会環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する。 行き先が不透明で変化が激しく、さまざまな事象が複雑に関係し合うVUCAの時代に突入し、世界中で分断や対立が拡大・顕在化しています。そうしたなか、私たちの前に立ちはだかる問題の多くが、1つの分野や1つの国だけでは解決できず、領域を超えた協働・融合が求められるものとなっています。同時に、これまでの成功体験が通用しない、従前と同じやり方では解決できないという状況も次々と起こっています。 問題の解決に向けて多様なステークホルダーが合意形成をしていくためには、表面的な意見や主張ではなく、り変えるために不可欠なのが、「対話」です。対話には自分も他者も変える力があり、それゆえ、意見の対立を対話により乗り越え、合意形成が可能になるのです。 では、対話とはどのようなものなのでしょうか。他者との対話の場は、互いの意見をぶつけ合う場ではありません。また、表面的には相手の話を聞いているようでも、「私は正しくて、あなたは間違っている」という前提で聞いていては、対話にはなりません。自分の考えや評価・判断を一旦保留にした状態で、相手の話に耳を傾ける。これが、対話をするうえでの基本的な姿勢です。 対話をするうえで重要なのが、表面その根源となっているものの見方や価値観を変える必要があります。一方、身に染みついたものの見方や価値観を手放すことは、容易なことではありません。過去の成功体験を手放せず、これまでのやり方でもっとがんばれば問題が解決できるはずだ…と言い続けた結果、硬直してしまっているのが今の日本社会ではないでしょうか。これからの問題解決に必要なのは、人々のマインドセットから変えていくこと。それが、持続可能で幸福な未来社会を創造する出発点となるのです。 ものの見方や価値観を新しくつくVUCA※1時代の問題解決は、マインドセットを変えることから「対話」を通して自分の枠の外から学ぶことで、人は変わっていく未来社会の創造に「対話」が果たす役割多様な人々が構成する社会において、意見が対立するのは当然のこと。対立をどう乗り越え、その先にいかに未来を創造するかが、私たちに課せられた課題である。熊平氏はそうした前提に立ち、課題解決の手段として対話やリフレクションの重要性を訴え続けてきました。なぜ今、対話や〝対話的な学び〞が求められるのか。対話の果たす役割について、語っていただきました。対立を乗り越え、新たな価値を創造する「対話」未来社会の創造に「対話」が果たす役割72021 MAY Vol.437
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