キャリアガイダンスVol.437
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ん。どうしたらいいのかわからないのは先生だけではないし、先生だけががんばる必要はありません。社会がもっと学校教育を支援して、一緒になって成長していけるようにすることが大事だと思っています。日々子どもたちと接している先生方は、未来創造のフロントランナーです。社会が変われるかどうかの境目にある今こそ、教育と社会とが対話を進め、融合していくことが求められているのです。うのが大きな要因です。カギを握るのが対話です。異なる価値観や背景をもつ者同士がフラットな立場で対話をする。対話によってこそ、多様性はその真の価値を発揮できるのです。 新しい価値観をつくり未来を創造するためには、社会に出る前に、対話のベースを身につけておく必要があります。だからこそ、学習指導要領にも「対話的な学び」が明記されているのだと、私は理解しています。 ひとつ、海外の事例を紹介しましょう。オランダでは、子どもたちは幼児期から対話の練習をします。オランダのシチズンシップ教育「ピースフルスクール」では、子どもたちは「意見は対立して当然だ」ということ学び、意見を述べる際には理由と事例を添える、つまり、意見の背景まで伝えることを習得していきます。また、子どもたちは「対話を通して自分の考えを変えてよい」とも教わっており、これも対話をするうえでの共通認識としてとても大事なことです。 今すぐオランダのように…とはいかなくとも、対話の第一歩は、相手に、そして自分自身に、「なんで?」と問いかけて思考を掘り下げていくことです。つい、「何を・どのように」にフォーカスしがちですが「なぜ」こそが大事。そして「なぜ」を自分の中にもっておくと、脳は自然と答えを探し始めるのです。「主体的・対話的で深い学び」とは、まさにこの「なぜ」を掘り下げていく学びのこと。自分の「なぜ」、共に学ぶ仲間の「なぜ」を、対話を通して深く掘り下げ、相手から学んでいくということなのです。「主体的・対話的で深い学び」を実践しなくてはいけないと、肩に力が入っている先生もいらっしゃるかもしれません。でもその前に、まずは先生方自身に、対話をすることを楽しんでいただきたいと思います。対話を通して新しいものに出会うのは、とても楽しくワクワクすることであり、これこそが学びの本質です。 そして、対話も含めてですが、学習指導要領やOECDのラーニング・コンパスにまとめられていることは、まだ世の中の誰も知らない未来社会の創造のために必要な資質・能力やそれを育成するための手法です。先生自身も学んでいないこと、わからないことを生徒たちに教えなくてはならない苦労やプレッシャーは、計り知れませ節目の今、求められるのは、教育と社会の対話と融合「なぜ」を掘り下げ、他者から学ぶ学びへ図2 未来を変える力をもつ「対話」一体個々未来が変わる現状維持対話内省と共感のある話し合いディベート意見と論拠の主張し合い共創目的に向かい、無から有が生まれる話し合い一方向講義形式での情報の共有全体一人ひとり一人ひとりの中に変化が起きるのも対話の特徴。一人ひとりのものの見方や価値観に変化が起きるからこそ、どちらの意見でもない新たな合意が形成され得る。取材・文/笹原風花あらゆる経験から学び、未来に活かすために不可欠な「リフレクション」の実践法を、「認知の4点セット(意見・経験・感情・価値観)」をもとに紹介する1冊。リフレクションの先にある対話や傾聴、未来を創る力、課題解決力、多様性からの価値創造などにも触れている。リフレクションのための8つのフレームワーク付き。リフレクション自分とチームの成長を加速させる内省の技術(熊平美香著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)対立を乗り越え、新たな価値を創造する「対話」未来社会の創造に「対話」が果たす役割92021 MAY Vol.437

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