4Vol.437 別冊特集看護師としてのキャリアを結びつけて考えることが求められるんですね。もう一つ、多くの看護師と話をしていて感じることは原体験の大切さです。例えば、高校時代のボランティアや看護体験、大学時代の実習などで患者さんと直接関わるなかで使命感やこうなりたいという思いを抱いた経験は、看護師としての原体験となり、現場で辛くなったときに立ち返る支えになるもの。看護師を目指す人たちには体験を通してキャリアを考えることを意識してほしいと思います」 看護師として現場で経験から学びつつ、患者に寄り添う気持ちやそのための専門性を養っていくことはすべての看護師に求められることだ。そのうえで、先に挙げたキャリアの選択肢がある。現場での多様な経験、さまざまな研修を重ねながら専門性の幅を広げていけばジェネラリストへの道が拓け、組織内で主任、看護師長、看護部長へとステップアップを目指せば組織を動かすリーダー、マネージャーとしてのキャリアが拓ける。また、特定の看護分野の専門性をより深めていくことによってスペシャリストを目指す選択肢もある。 このうち、現場を知らない高校生にとって最もイメージしづらいのはこのスペシャリストではないだろうか。 近年は看護師に求められる専門性も高度化しつつある。感染管理、がん放射線療法看護、緩和ケア、手術看護、新生児集中ケア、脳卒中看護、などの細分化された分野に関して高い専門知識や技術をもち、現場の問題解決や指導的役割を担う認定看護師(図3)、がん看護、在宅看護、急性・重傷者看護、遺伝看護、感染症看護、災害看護、地域看護、小児看護などの特定の分野に関して大学院修士課程で学んで専門性を深めた専門看護師(図4)、同じく大学院修士課程で学び、医師に代わって一定レベルの診療行為を行うスキルを身につけた診療看護師(ナースプラクティショナー:NP)(図5)といった専門資格を有する看護師へのニーズも伸びている。5年以上の実践経験を積んでこれらの資格を取得すれば高度な専門性が求められる現場でリーダーシップが発揮でき、給与面で優遇されることもあって注目されるキャリアパスだ。 「また、マネジメントを目標とするなら、常に組織全体を見ながら、医療制度のなかで自分たちがどのように動くべきかを意識し、目の前の患者さんの幸福と同時に、社会全体の幸福、チームメンバーである看護師たちの幸福も考えることが大切です。組織での最適解を追求することも、現場の仕事とは違ったやりがいがあります」(濱田氏) もちろん、高校生の段階で先々のキャリアをすべて決める必要はないし、現場で経験を重ねるなかで方向性が変わってくることもあるだろう。しかし、例えば「総合病院でスペシャリストとして最先端医療に関わっていきたい」「地域の高齢者の健康や日々の暮らしを支える仕事をしたい」という自分なりの原体験や思いに基づいたキャリアビジョンがあれば、それに適した実習環境やカリキュラムがある学校を選ぶことができる。キャリアデザインや看護管理学といった教育の充実度もチェックポイントになるだろう。知名度や偏差値、国家試験合格率以外に、教育内容・教育環境をしっかりと見極める視点をもって学校選びができれば、学生時代に「看護師になること」の先を見据えて成長することができるはずだ。専門看護師のなり方と専門看護分野図4資格取得までのプロセス専門看護分野診療看護師(NP)のなり方と求められる力図5資格取得までのプロセス求められる力5年以上の実践経験大学院修士課程専門看護師認定審査5年以上の実践経験大学院修士課程NP資格認定試験資格取得資格取得がん看護遺伝看護精神看護在宅看護感染症看護地域看護家族支援母性看護老人看護慢性疾患看護急性・重症患者看護包括的健康アセスメント能力熟練した看護実践能力チームワーク・ 協働能力倫理的意思決定能力医療処置・管理の実践能力看護マネジメント能力医療保健福祉制度の活用・開発能力災害看護小児看護
元のページ ../index.html#4