キャリアガイダンスVol.438
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希望の道標取材・文・撮影/山下久猛経営者/秋本可愛 大学卒業後、介護業界の問題を解決したいと思い、起業しました。現在は介護施設の人材採用支援を主な事業としています。でも、高校時代の私は自分が将来介護関係の会社を立ち上げて経営者になるなんて、想像すらできませんでした。 高校の頃は部活や学校行事に打ち込むばかりで、進路選択の時期になっても、せいぜい「得意の英語を活かせる仕事がいいかな」とか「キャリアウーマンになりたいな」と思う程度。高校卒業を意識したとき、目の前からこれまであったレールが突然消えてしまい、どっちの方向へ進めばいいのかわからず不安になったことを覚えています。 ただ、ずっと東京にあこがれていて、上京することだけは決めていたので、卒業後は東京の大学に進学しました。4年間でやりたいことを見つけようと思っていたのですが、嬉しくて遊んでいたらあっという間に1年が過ぎ去ってしまって。これではまずい、もっと成長するために、高校時代のように何かに打ち込みたいと思い、起業サークルに入部しました。このときはまったく意識していなかったのですが、これが後の私の運命を決定づけることになります。 入部後、同じチームのメンバーが、祖母が認知症になって自分のことを忘れてしまったと嘆いていたので、認知症患者向けのフリーペーパーを作ることにしました。その過程で、もっと自分自身で認知症について知りたいと思い、介護施設でアルバイトを始めました。実際に介護施設で働いてみたら、いろいろな課題に気づきました。やはり同じ事象でも本やネットだけの情報と自分自身で体験するのとでは全然違うと思いましたね。なかでも、介護施設内の人間関係や職員の短期離職など、認知症のある方を支える側の環境の劣悪さと、あまりにも周りに介護に関心がない学生が多すぎるということが問題だと感じました。これからどんどんニーズも課題も増えていく業界に若い人が関心をもっていないのはまずいんじゃないか、この問題は介護の外側から来た私だからこそ感じられたんじゃないか、だから私こそがこの問題を解決しなきゃいけない! という使命感をもってしまったんです。それで自分でこの問題を解決するために、卒業と同時に会社を立ち上げたというわけです。もちろん卒業後、就職せずにいきなりたった一人で起業することに対しては不安もありましたが、背中を押された理由は、私のいとこが二十歳で亡くなっていることです。だから「私も二十歳そこそこで死ぬかもしれない。もし今、命があるなら何をしたいか」という、とにかく今、目の前にあるやりたいことに全力を投じたいという気持ちにしかならなかったんです。この姿勢は基本的に今も変わっていません。 起業したときは一人でしたが、今では社員が6名に増え、やれることも増えて忙しくも充実した日々を送っています。今までの人生を振り返ると、単純に目の前のことを一生懸命やってきた先に今があるというだけです。だから高校生の皆さんも将来の自分の姿なんてわからなくて当たり前だし、今無理に決めなくてもいい。私自身も高校時代はバスケや応援団、大学時代は起業サークルや介護とやりたいことがどんどん変わった先に、人生をかけてやりたいことが見つかりました。だから皆さんもすごく夢中になれることじゃなくてもいいので今、目の前にあることに一生懸命取り組んでほしい。そうすれば、いつかきっと本当にやりたいことや得意なことに出会えると思いますよ。将来の自分なんてわからなくて当たり前。目の前のことに一生懸命打ち込めばきっと道は見えてくる!1990年、山口県出身。山口県立下松高校、専修大学商学部卒。大学生のとき介護現場でのアルバイトを通し課題意識を抱き、2013年(株)Join for Kaigo(現、(株)Blanket)設立。「すべての人が希望を語れる社会」を目指し介護・福祉事業者に特化した採用・育成支援事業や人的課題の解決を目指す「KAIGO HR」を運営。日本最大級の介護に志をもつ若者コミュニティ「KAIGO LEADERS」発起人。2017年東京都福祉人材対策推進機構の専門部会委員就任。第11回ロハスデザイン大賞2016ヒト部門準大賞受賞。第10回若者力大賞受賞。あきもと・かあい32021 JUL. Vol.438

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