学校の外とつながり、定数の10倍の「教師」から生徒が学べる学校に (勝部先生)的な授業は非常に重要だと思っている一方で、総合的な探究の時間や学校設定科目には教員定数がつかないという人的保証がないジレンマもあります。すると現状の教員数のなかでやらざるを得ず、先生たちの負担だけが増えていく。新しい学びの実践を現実的に進めていくための答えが自分にはまだないので、ぜひお知恵を頂きたいと思います。菅沼 すごく難しい問題だよね。本校も安田先生の学校と同じく進学型総合学科です。大学受験を優先すると、選択科目がどんどん削られて限りなく普通科に近づいてくる。普通科改革の話もありますが、総合学科が進学実績や偏差値で普通科と比較されて、「上から何番目」のような評価になってしまうことには何の意味もないと私は思っています。やっぱり 「あなたの一番やりたいことが実現できる道が拓けます」と伝えることが総合学科としてのあり方だと。だから課題研究が大事だと考えています。 そもそも35単位に増やしてやっているにしても、本当に35単位やらなきゃならない授業の内容って何なのか検証しなければいけない。若い先生に「学校で授業をたくさんやったことが大学合格に結びつきましたか」と聞いたら「違う」と言われました。自分でどれだけやったかなんですよ。それなら、学校の授業はもっと少なくてもよくて、自分で勉強できる道をどれだけつくってあげられるかですよね。と思っていながらなかなか実行はできていませんが(笑)。真下 私もずっとそのことを考えています。県立高校時代は合格実績命の進学校にもいましたし。でも、よく考えたら高校は大学の予備校ではない。高校時代は学問的にも一番面白くて、いろんな経験ができて、自分がどれをやるかチョイスできる大事な時期。それを味わわせてあげないと、やりたいことがわからない生徒が育ってしまうと思います。 今後は、大学が偏差値重視の入試をしていると高校から優秀な生徒が来なくなるという世界にしていきたい。今は世界と簡単に繋がり、スタンフォード大学やハーバード大学の授業もオンの課題を見つけ、それを探究するからこそ将来の自分の軸になるものが見えてきます。一人ひとりの個に応じつつ、いかに協働的な課題探究ができるかというのが現在の課題です。私はできると思っています。真下 探究する力ってこれから絶対に必要な力ですよね。その力をつけるには、総合的な探究の時間だけでは多分無理だろうと思っていて、各教科の授業でも「なぜなんだろう?」と問う力を育てていかないと。教科の先生方にも生徒が自分で問いを立てるような授業を今年の2月ごろから始めてもらっています。すべての教科でそういう取組をすることで、結果として総合的な探究の時間に課題を見つけられるなど、かたちとなって表れてくるのではと期待しています。安田 本校も菅沼先生の学校と同じく総合学科ですが、進学系の総合学科として入試実績も求められています。菅沼先生や真下先生のおっしゃるような探究的な学びに力を入れたいと思いつつ、まだ探究の授業で本校ならではのスタイルを確立できておらず、大学入試に結びつけられるかという悩みもあり…。勝部 安田先生と同様にやりたい授業と進学実績のジレンマは進学校の先生は少なからずおもちだと思います。私自身もこの先を考えたら教科横断話をされましたが、皆さんはそうなるためにこれからどんなことをしていきたいとお考えですか。菅沼 本校は総合学科でキャリア教育に力を入れているということもあり、1年生で産業社会と人間、2年生で課題探究を重視してきましたが、以前は生徒たちのやらされ感が強かった。それで、生徒たち自身が本当に知りたいこと、課題だと思うことを見つけることに力を入れてきました。一人ひとり課題が違うはずで、それを見つけるために生徒たちにはとにかく外に出ていろんな人に会いに行けと。みんなが自分から動いて外の人に会いに行くと教員だけでは生徒全員のフォローができないので、外部のNPOとも連携したりしています。自分自身302021 JUL. Vol.438
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