キャリアガイダンスVol.438
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 新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う臨時休校は、学校関係者に難題を突きつけるとともに、多くのことを考えるきっかけを与えました。2019年4月に文部科学大臣から「新しい時代の初等中等教育の在り方について」諮問を受け、議論を進めていた中央教育審議会の関連各部会の委員に対しても同様です。 一つは、学校の存在意義を改めて考えさせられたこと。また、今がまさに予測困難な時代のただ中にあることを痛感し、新学習指導要領にもうたわれている、主体的に考え多様な他者と協働して納得解を見出す必要性を実感したことなどです。 他方、ここ数年重ねてきたICTの利活用に関する議論が、GIGAスクール構想という形になっていたのは不幸中の幸いでした。形があっても大変だったのですから、何もなければ、一斉休校時の混乱はもっと深刻なものになったのではないでしょうか。 コロナ禍中、それも新学習指導要領の全面実施を前にした時期になぜ新たな答申を、と思われた方もいらっしゃるでしょう。ただ、教育を支える基盤的ツールとしてICTが不可欠になるなどの変化も見据えて、新学習指導要領の着実な実施を期するためには、考え方を整理し、条件を調える必要がありました。義務教育9年間を見通しての小学校高学年の教科担任制導入にしても、高校のスクール・ポリシー策定にしても、教師が生徒の伴走者であるという考えにしても、新学習指導要領による具体の取組を支コロナ禍への対応、新学習指導要領、大学入試改革、ICTの導入…時代の転換点にいる今、高校はどのように次のステージを目指せばいいのか。中央教育審議会初等中等教育分科会長ほか、多数の部会の委員として「令和の日本型学校教育」の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現〜(答申)の審議に関わった荒瀬克己氏に、新学習指導要領とのつながりも踏まえ、これらをどう捉え、これからの学校づくりに活かしていくことができるか伺いました。新学習指導要領の着実な実施に向けて整理したのが今度の答申取材・文/堀水潤一 撮影/平山 諭あらせ・かつみ●1953年生まれ。京都市立高校教諭、京都市立堀川高校 校長、京都市教育委員会教育企画監等を経て大谷大学文学部教授、兵庫教育大学理事、関西国際大学学長補佐等。05年以降、中央教育審議会初等中等教育分科会ほか数多くの委員を歴任。21年4月独立行政法人教職員支援機構理事長に就任。第11期中央教育審議会では副会長、初等中等教育分科会長、教育課程部会長、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会 部会長代理などを務める。独立行政法人教職員支援機構 理事長第11期中央教育審議会 副会長荒瀬克己一人一人の生徒を主語にする、もっと自由で魅力ある学校づくりを「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)から読む高校へのメッセージ322021 JUL. Vol.438

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