キャリアガイダンスVol.438
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答申で示された高校の特色化・魅力化の例図2○高等学校は,義務教育を修了した生徒が入学者選抜を経て入学するものであることから,各高等学校が育成を目指す資質・能力を明確にするために,各学校の設置者が,各学校や所在する地方公共団体等の関係者と連携しつつ,在籍する生徒の状況や意向,期待に加え,学校の歴史や伝統,現在の社会や地域の実情を踏まえて,また,20年後・30年後の社会像・地域像を見据えて,各学校の存在意義や各学校に期待されている社会的役割,目指すべき学校像を明確化する形で再定義することが必要である。以下略。○各高等学校の存在意義や社会的役割等に基づき,各学校において育成を目指す資質・能力を明確化・具体化するとともに,学校全体の教育活動の組織的・計画的な改善に結実させることが不可欠である。その際,高等学校教育の入口から出口までの教育活動を一貫した体系的なものに再構成するとともに,教育活動の継続性を担保するため,育成を目指す資質・能力に関する方針,教育課程の編成及び実施に関する方針,入学者の受入れに関する方針(これら3つの方針を総称して「スクール・ポリシー」と称する。)を各高等学校において策定・公表し,特色・魅力ある教育の実現に向けた整合性のある指針とする必要がある。以下略。○現行法令上,「普通教育を主とする学科」は普通科のみとされているが,約7割の高校生が通う学科を「普通科」として一括りに議論するのではなく,「普通教育を主とする学科」を置く各高等学校がそれぞれの特色化・魅力化に取り組むことを推進する観点から,各学校の取組を可視化し,情報発信を強化するため,各設置者の判断により,当該学科の特色・魅力ある教育内容を表現する名称を学科名とすることを可能とするための制度的な措置が求められる。○どのような学科を設置するかについては,各設置者が現在の国際社会,国家,地域社会を取り巻く環境や,高校生の多様な実態を踏まえて検討されるものであるが,例えば,以下のものが考えられる。以下略。学者の受入れに関する方針」までを、つまり入口から出口までと実際の中身を、体系的に計画し取り組む。無論、一度決めた方針が未来永劫続くわけもなく、常に見直しが必要という点を含め、カリキュラム・マネジメントそのものではないでしょうか。 普通科改革(図2)も、スクール・ポリシー策定の範疇の話だと思っています。これまで普通科にはさまざまな法律上の制約がありました。22年前に堀川高校が人間探究科と自然探究科という新たな専門学科を設置したのも、縛りを解いて新しいことにチャレンジするためでした。 今後は、「うちはこういう形の普通科をやります」「学校設定科目と総合的な探究の時間で独自性を出すため学科名を変えます」ということも可能になるわけです。もちろん、するしないは設置者の判断。そうしたことも含め、今回の答申は、学校の置かれた状況に応じて特色を強く打ち出すなど、各校が思い描く教育活動を自由に進めることを後押しするものです。 新学習指導要領「前文」には「学習指導要領とは、こうした理念の実現に向けて必要となる教育課程の基準を大綱的に定めるものである」として、「各学校がその特色を生かして創意工夫を重ね、長年にわたり積み重ねられてきた教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら、生徒や地域の現状や課題を捉え、家庭や地域社会と協力して、学習指導要領を踏まえた教育活動の更なる充実を図っていくことも重要である」と述べています。プロフェッショナルとしての誇りと責任をもって、どんな学校にするか考え、取り組んでいく際に、学習指導要領の示すものを教育活動に役立てる。まずは学校という現場に立脚することを重視すべきだと私は考えています。 ただ、そのための手がかりや自己点検のツールも必要になるわけで、それが今回の答申と捉えていただければ。よって、時間はかかるのですが、できれば答申だけでなく、基になった多くの部会等の「審議まとめ」や議事録の一部でもお読みいただければ理解が深まると思います。 例えば、「個別最適な学び」と「協働的な学び」に関して、当初はそれらを「往還」するという表現がなされていました。しかし、「それぞれが独立した存在に映り、二つの型と捉えられかねない」と考えて、「一体的に」充実という言い回しになった経緯があります。同じくスクール・ポリシーの議論では、「卒業の認定に関する方針」という名称について、「単位数等の卒業認定に係る規定を想起させてしまう」という意見により、「育成を目指す資質・能力に関する方針」に落ち着きました。このように一言一句に意味があり、思いが込められています。 とはいえ、時間的制約もある答申は、その時点での合意を示したものに過ぎません。生徒や学校の現状に基づいて具体の中身を完成させるのは、現場の教職員だと思っています。 繰り返しますが、「生徒が主語」になる学校をつくるのは現場の教職員です。例えば進路指導について2016年12月の中教審答申では脚注にこう書かれています。「進路指導とは、生答申はあくまでその時点での合意。完成させるのは現場の先生方※答申「第Ⅱ部各論」より抜粋答申の一言一句には意味や込められた思いがある話し合うことからがスタート。組織としてのメタ認知を342021 JUL. Vol.438

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