キャリアガイダンスVol.438
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412021 JUL. Vol.438先生: 進路希望調査が未提出のようだけど、なかなか書けない理由があるのかな? 悩んでいることがあったら相談して。生徒: はい。やりたいことが漠然としていて、決められない…。先生: そうか。何かやりたいことを見つけたい気持ちがあるんだね。生徒: みんな、これがやりたいって目標を明確にしているし、焦るんだけど。先生: そうしたら、改めて時間をつくって一緒に目標を考えてみようか。生徒: はい。お願いします。生徒: 親が、どうせなら薬剤師目指せばって言うんだけど、これからでも受験勉強間に合う?(ソワソワしながら)先生: 気になっているのは、受験勉強のことだけかな?生徒: いえ。そもそも薬剤師なんて考えたこともなかったから、自分にできるのか不安…。先生: そうか。急に言われたんだね。なんで急に、薬剤師って言われたの?生徒: 知り合いの人が、薬剤師の資格もっていたから再就職できたって聞いて、どうせ理系にいるならいざっていうときに強い資格を取ったほうがいいって(下を向いている)。先生: あまり気が進まないような気持ちが先生には伝わってくるけど?生徒: うん。実は(と話が進む)。生徒: 将来やりたい仕事っていっても、全然想像つかない。先生: そうか。仕事調べとか、ずいぶんがんばっていたようだけど。生徒: うん。でも、自分がやるのが想像つかないっていうか。先生: なるほど。面白いと思うのと、自分が働くっていうのとは、違うからなあ。 生徒: そうなんですよ~。先生: ちなみに、仕事調べでは、具体的にどんなことをした?生徒: (やったこと、聞いたことなどをいろいろ話す)先生: そうか。そういえば○○先生がその業界に詳しいから、相談してみたらどうだ?生徒: え、そうなの? 知らなかった。話聞いてみたい。<例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ><例えば、こんなやりとりへ>苅間澤先生のワンポイントアドバイス学習指導や生徒指導でも役立つ理論モデルです『カウンセリングの理論』『カウンセリングの技法』『カウンセリングの原理』國分康孝著 誠信書房國分康孝氏のカウンセリング三部作。特に『カウンセリングの原理』は教員向けの解説も多くわかりやすい。 カウンセリングを学んだ先生の中には、「カウンセリングは話を聞くばかりで進む気がしない」という思いを抱く方が少なくありません。しかし、國分康孝先生のコーヒーカップ方式は明確に課題の解決方法や処置を行うことも示し、スキルの指導や情報提供やアドバイスの重要性も強調しているので、受け入れやすい考え方だと思います。また、さまざまな理論の包括的・折衷的なモデルなので、ある意味良いとこどりのモデルだと言えます。そのため、進路相談の場面だけでなく学習指導面や生徒指導面でも「リレーションづくり」「問題をつかむ」「解決方法・処置」の三本柱は重要で、さまざまな人生の問題にも当てはめられる汎用性の高い理論モデルだと言えます。ぜひ、生徒としっかり信頼関係を築き、問題の把握を深めて解決に向けた面接を実現してみてください。コーヒーカップ方式のほかにも、カウンセリングの考え方やスキルの中には、学校教育の各場面で活かせるものがあります。國分先生はそれを、「教師のための育てるカウンセリング」と提案しました。カウンセリングを“教育方法”として活用してみてはどうでしょうか。

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