キャリアガイダンスVol.438
43/66

進路指導部主任(主幹教諭)前田和也先生 高校入学時点で課題を抱える生徒、自己肯定感の低い生徒が多い背景には、中学校時代までの経験値不足があると前田先生は考える。「部活にせよ勉強にせよ何かをやり抜いたという成功体験やポジティブな切り口で社会を知る体験など、経験の〝引き出し〞が足りていない生徒が多いと感じます。本人たちに原因があるのではなく、育ってきた環境によるところが大きいのですが、生徒は『どうせ自分なんて…』と思いがち。そうなると、新しいことへの挑戦にも消極的になってしまうし、引き出しがないがゆえに、自分には何が向いていて将来どんなことがしたいかを考えることも難しくなる。結果として、進路を消去法で選んでしまうことになります。いやそうじゃないよ、若い君たちには可能性もチャンスもあるんだよ、やりたいことを見つけてがんばればそれを実現できるんだよ…ということを訴え、本人たちに気づかせることから、本校の進路指導は始まります」 進路指導やキャリア教育の取組は、主に「総合的な探究の時間」のなかで進めている。1年次のテーマは、働くことや職業・仕事について学ぶこと。生徒にとっては「働く=生活するためのお金を稼ぐこと」という意識が強く、「仕方なくやるもの、つらいもの、面倒なもの」というネガティブなイメージがあるという。「お金を稼ぐための手段としてだけでなく、具体的にどんな業務やキャリアアップの道があるのかを知り、仕事の楽しさややりがい、誇り、働く意味や価値にも目を向けてほしい」と前田先生。そのための機会として、2月に全員を対象にした2日間のインターンシップを実施している。 昨年度はコロナ禍の影響で実施できなかったが、例年、生徒を派遣する事業所は100カ所以上。事前学習(ツール1)を重ねたうえで、インターンシップに臨む。最初こそ教員がつなぎ役を務める 東京都江戸川区に位置する葛西南高校。市中にありつつも敷地は広く、施設・設備も充実しており、生徒たちは恵まれた環境で高校生活を送っている。「自ら判断し、律して行動する:自主」「豊かな創造力で未来を拓く:創造」「愛と責任感をはぐくむ:連帯」の教育目標のもと、教員は「チームかさなん」を合言葉に一丸となって教育活動にあたっている。 生徒の進路は、大学・短大への進学が約3割、専門学校への進学が約4割、就職が約3割と多様で、進学・就職先もさまざまだ。さらに近年は、進学先の幅が以前にも増して広くなっている。生徒一人ひとりの希望や特性に応じた個別対応が求められるなか、「全方位型の進路指導」をモットーに、進路指導・キャリア教育を教育活動の軸に据えてきた。一方、卒業生の追跡調査により、離職者や中退者が少なからず存在することがわかっており、ミスマッチを減らすことが課題の一つとなっている。また、入学時点で、学力や家庭環境などさまざまな課題を抱えている生徒、自分に自信をもてず自己肯定感の低い生徒も多く、進路選択や将来の目標設定においても消極的になりがちで、明確な意志をもてない生徒が少なくないという現実もある。高校3年間を通してこうした生徒たちの意識をいかに変え、自らの手で未来を拓いていける状態にもっていくかが、進路指導のテーマとなっている。葛西南高校(東京・都立)取材・文/笹原風花大学進学52人、短大進学15人、専門学校進学92人、就職67人、その他(受験準備など)7人大学進学者のうち半数強が学校推薦型選抜を利用。一般選抜、総合型選抜はいずれも2割前後となっており、進学先も受験方式も多様化が進んでいる。1973年開校/普通科/生徒数679人(男子351人・女子328人)1年次のインターンシップで、「働く」のイメージを刷新する432021 JUL. Vol.438

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る